冷酷な御曹司は虐げられた元令嬢に純愛を乞う
「彼女から離れろ!」
突然、目の前が暗くなったかと思うと、掴まれていた腕がフッと軽くなる。
「司さん…。」
気付けば司が男の腕を捻り上げ、柔道のわざの如く叩き込まれて床に転がっていた。
「イテテテッ…。」
男は痛がり、慌ててその場を去って行った。
司は去って行く男を人睨みして、転がった山折れ帽子を拾い上げ被り直す。
「大丈夫だったか?怪我は?」
すかさず莉子の掴まれていた腕を確認し、今にも泣きそうな莉子の頬をそっと撫ぜる。
「だ、大丈夫です。…助けて頂いて…ありがとうございました。」
「いや、遅くなって申し訳無かった。いろいろあって…。」
そう言いながら腕時計を見ると、既に汽車の到着時刻まで10分も無い。
「話しは後だ。とりあえず汽車に乗り遅れるといけない。」
司は素早く莉子の持っていた荷物を持ち、行くぞとばかり目を向けて来る。
両手に荷物を持った司を見て、
「あの…荷物は自分で持てます…手を…。」
そこまで言いかけてハッとして恥ずかしくなって、真っ赤になってしまう。
私ったら何を言おうとしてるの…。
「ごめんなさい…人が多くて、はぐれたら大変だと思って…急がないとですね。」
慌てて取り繕ってその場を流そうとするのに、
「そうだな…。
すまない。俺は、そういうところが疎くて麻里子によく怒られる。」
時間も無いのに、肩に莉子の鞄をかけて自分のカバンは右手に握り直し、空いた左手の手袋をわざわざ取り莉子の手を繋ぐ。
持てなくなった重箱を包んだ風呂敷は莉子が素早く持ち上げて、
「大丈夫です。」
と司に微笑むから、
「急ごう。」
司は足早に人混みを掻き分ける。
莉子はそんな司に引っ張られるようにして後を着いて行くだけだけど、こんなに流れるように人混みをすり抜けられるなんて凄いと思う。
1人だけならきっと人混みを抜け出す事も出来ず、改札口の場所さえ分からなかったと思う。
突然、目の前が暗くなったかと思うと、掴まれていた腕がフッと軽くなる。
「司さん…。」
気付けば司が男の腕を捻り上げ、柔道のわざの如く叩き込まれて床に転がっていた。
「イテテテッ…。」
男は痛がり、慌ててその場を去って行った。
司は去って行く男を人睨みして、転がった山折れ帽子を拾い上げ被り直す。
「大丈夫だったか?怪我は?」
すかさず莉子の掴まれていた腕を確認し、今にも泣きそうな莉子の頬をそっと撫ぜる。
「だ、大丈夫です。…助けて頂いて…ありがとうございました。」
「いや、遅くなって申し訳無かった。いろいろあって…。」
そう言いながら腕時計を見ると、既に汽車の到着時刻まで10分も無い。
「話しは後だ。とりあえず汽車に乗り遅れるといけない。」
司は素早く莉子の持っていた荷物を持ち、行くぞとばかり目を向けて来る。
両手に荷物を持った司を見て、
「あの…荷物は自分で持てます…手を…。」
そこまで言いかけてハッとして恥ずかしくなって、真っ赤になってしまう。
私ったら何を言おうとしてるの…。
「ごめんなさい…人が多くて、はぐれたら大変だと思って…急がないとですね。」
慌てて取り繕ってその場を流そうとするのに、
「そうだな…。
すまない。俺は、そういうところが疎くて麻里子によく怒られる。」
時間も無いのに、肩に莉子の鞄をかけて自分のカバンは右手に握り直し、空いた左手の手袋をわざわざ取り莉子の手を繋ぐ。
持てなくなった重箱を包んだ風呂敷は莉子が素早く持ち上げて、
「大丈夫です。」
と司に微笑むから、
「急ごう。」
司は足早に人混みを掻き分ける。
莉子はそんな司に引っ張られるようにして後を着いて行くだけだけど、こんなに流れるように人混みをすり抜けられるなんて凄いと思う。
1人だけならきっと人混みを抜け出す事も出来ず、改札口の場所さえ分からなかったと思う。