冷酷な御曹司は虐げられた元令嬢に純愛を乞う
しばらく、車窓に目を向けて自分落ち着かせた。

街並みを抜けて田んぼや畑が見える頃、やっと莉子の涙は止まり、司もそれを見てホッと息を吐く。

しばらくして莉子が司に向き合いポツリと話し出す。

「私はいつも司さんから与えられてばかりで、何も返せないのが心苦しいのです。それだけじゃなくて…亜子にも沢山のお金を出して頂いて…なのに私には返す物が何も無くて…。」

見つめ合うその目は真っ赤で、まだ涙の余韻を残していた。

「そんな事気にするな、俺のただの自己満足なんだ。
莉子に手を上げ挙句の果てに怪我までさせて…心にも身体にも消えない傷を残してしまった…。

償っても償い切れないと思っている。
だから莉子が喜んだり笑顔になってくれる事が、俺にとって最大の償いでもある。気にせず受け取ってくれたらそれで良い。」

そう言って、莉子の頭を優しく撫ぜる?

「私は…少しでも…司さんのお役に立てるように精一杯ご奉仕していきます。」
莉子はそう言って頭を下げる。

「ご奉仕って言うのは…何かおかしいと思うぞ。
莉子と俺は結婚するんだから、これからは対等であるべきだ。それに俺の稼ぎは莉子の物でもあるから何の礼も要らない。」

握られたままの手が急にドキンと脈打ち出す。

この人は…同情や自分の罪を償う為に、私を受け入れてくれているんだろう、と莉子は思っている。

だけど、この手は大きくてとても安心するし、同時に心臓がドキドキして心がギュッと苦しくなる。
それでも離れたくなくて、ずっと側に居たいと願ってしまう。

私に出来る精一杯で、私もこの人が笑顔になって欲しいと莉子も願ってしまう。
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