冷酷な御曹司は虐げられた元令嬢に純愛を乞う
そんな風に2時間ほどの汽車での移動を楽しみ、いつの間にか横浜に到着する。
駅に着くと、長谷川商会の社員がわざわざ待っていて車で家まで送ってくれた。
彼はここでは支店長なんだと、莉子はそこで始めて知る。
束の間仕事の顔になった司は、莉子の知る彼より倍厳しくて、完璧なまでに抜かりなく、一気に空気がピリっとなるのを感じ背筋がピンとなるほどだった。
「では、3日後会社でお待ちしております。奥様も是非、横浜を楽しんで下さいませ。」
莉子は社員からなぜか奥様と呼ばれ、否定する空気感でも無かった為受け入れてしまったが、多少の違和感を感じざる得ない。
その事に司は何も触れないから、莉子も聞けないままでいた。
洋館は小高い丘の上にあり、会社から少し離れていた。
「広い…ですね。」
二階建ての洋館は思ったいた以上に広く、とても綺麗で新しく、莉子は家に一歩入った途端緊張で固まってしまう。
かつて住んでいた森山家の邸宅に少し似ていると思う。
司は立ち止まって動かなくなった莉子の背中を優しく押して、家の中を案内して回る。
「ここが台所で、こっちが風呂その隣がトイレになるが、各部屋にもトイレとバスは付いているから、そっちを使ってくれてもいい。2階に寝室がある。」
赤絨毯の敷き詰められた階段を登ると角部屋に入る。
「ここが主寝室だ。南の良く陽の当たる部屋だから
ここを莉子が使えばいい。俺は隣の客間で充分だ。」
その部屋は主寝室というだけあって、天蓋付きの大きなベッドに、煌びやかな応接間のようなソファにテーブル、大きな暖炉に揺れる立派な椅子まである。
「こんな部屋に1人でなんて無理です…。」
莉子は恐れ慄き、一歩下がる。
「俺も…この家はどうかと思ったんだ。」
ため息混じりに司が言う。
「2人では広過ぎるうえに、会社からも少し離れる。出来れば歩いて帰れるくらいの距離が安心だから、借り屋で充分だと父にも言ったんだが…。
余っている物を使わないでどうするんだと押し切られた。日がな一日莉子を1人で過ごさせるのも心配だから通いの女中を雇ってもいいし、泥棒や強盗も気を付けなければならないから、用心棒を雇うべきかとも思っている。」
「大きなお屋敷を維持するのも大変なんですね。」
莉子は他人事のようにそんな事を思って呟く。
彼女に危機感があまり無いのは、生まれ育った伯爵令嬢という育ちの良さが、そうさせているのだろうな。と司は思い、またため息を吐く。
気持ちを入れ替えるように、
「ここは景色が売りなんだ。」
と、バルコニーに莉子を誘う。
小高い丘の上から横浜港が一望出来る。
冬の冷えた澄んだ空気が遠くの景色をより鮮明にしてくれている。青い海はキラキラと煌めき、遠くで船が動いているのも良く分かる。
「うわぁ…綺麗…。」
莉子が絵に描いたような綺麗な景色に見惚れて、しばらく見入っていると、
「…綺麗だな…。」
と、隣で司も珍しく感情を表に出して呟くから嬉しくなって顔を向けて見上げる。
すると、同じ方向を見ているとばかり思っていたのに、視線が合い微笑んでくるから、ドキンと脈打ち視線を急いで景色に戻す。
駅に着くと、長谷川商会の社員がわざわざ待っていて車で家まで送ってくれた。
彼はここでは支店長なんだと、莉子はそこで始めて知る。
束の間仕事の顔になった司は、莉子の知る彼より倍厳しくて、完璧なまでに抜かりなく、一気に空気がピリっとなるのを感じ背筋がピンとなるほどだった。
「では、3日後会社でお待ちしております。奥様も是非、横浜を楽しんで下さいませ。」
莉子は社員からなぜか奥様と呼ばれ、否定する空気感でも無かった為受け入れてしまったが、多少の違和感を感じざる得ない。
その事に司は何も触れないから、莉子も聞けないままでいた。
洋館は小高い丘の上にあり、会社から少し離れていた。
「広い…ですね。」
二階建ての洋館は思ったいた以上に広く、とても綺麗で新しく、莉子は家に一歩入った途端緊張で固まってしまう。
かつて住んでいた森山家の邸宅に少し似ていると思う。
司は立ち止まって動かなくなった莉子の背中を優しく押して、家の中を案内して回る。
「ここが台所で、こっちが風呂その隣がトイレになるが、各部屋にもトイレとバスは付いているから、そっちを使ってくれてもいい。2階に寝室がある。」
赤絨毯の敷き詰められた階段を登ると角部屋に入る。
「ここが主寝室だ。南の良く陽の当たる部屋だから
ここを莉子が使えばいい。俺は隣の客間で充分だ。」
その部屋は主寝室というだけあって、天蓋付きの大きなベッドに、煌びやかな応接間のようなソファにテーブル、大きな暖炉に揺れる立派な椅子まである。
「こんな部屋に1人でなんて無理です…。」
莉子は恐れ慄き、一歩下がる。
「俺も…この家はどうかと思ったんだ。」
ため息混じりに司が言う。
「2人では広過ぎるうえに、会社からも少し離れる。出来れば歩いて帰れるくらいの距離が安心だから、借り屋で充分だと父にも言ったんだが…。
余っている物を使わないでどうするんだと押し切られた。日がな一日莉子を1人で過ごさせるのも心配だから通いの女中を雇ってもいいし、泥棒や強盗も気を付けなければならないから、用心棒を雇うべきかとも思っている。」
「大きなお屋敷を維持するのも大変なんですね。」
莉子は他人事のようにそんな事を思って呟く。
彼女に危機感があまり無いのは、生まれ育った伯爵令嬢という育ちの良さが、そうさせているのだろうな。と司は思い、またため息を吐く。
気持ちを入れ替えるように、
「ここは景色が売りなんだ。」
と、バルコニーに莉子を誘う。
小高い丘の上から横浜港が一望出来る。
冬の冷えた澄んだ空気が遠くの景色をより鮮明にしてくれている。青い海はキラキラと煌めき、遠くで船が動いているのも良く分かる。
「うわぁ…綺麗…。」
莉子が絵に描いたような綺麗な景色に見惚れて、しばらく見入っていると、
「…綺麗だな…。」
と、隣で司も珍しく感情を表に出して呟くから嬉しくなって顔を向けて見上げる。
すると、同じ方向を見ているとばかり思っていたのに、視線が合い微笑んでくるから、ドキンと脈打ち視線を急いで景色に戻す。