冷酷な御曹司は虐げられた元令嬢に純愛を乞う
次の日私の気持ちとは裏腹に、冬空は重たい雲で覆われて今にも雪が降り出しそうな天気だった。
毎日の習慣で6時丁度に目を覚ます。
けれど、キンと冷えた空気にベッドから出る勇気を奪われる。司さんは起きているだろか?
ふと思い、耳を澄ます。
長谷川家に居た時の司さんは、毎朝の鍛練はお休みの日でも必ずしていた。
昨夜は咎める者はいないのだから、起こさなくて良いと言われたけれど…。
耳を澄まして隣の部屋の物音を探るが特に何も聞こえてこない。広い部屋に孤独を感じ、急いで着物に着替えて部屋を出る。
階段を降りて行くと、玄関ホールの方からビュンビュンと竹刀を振るう音が聞こえてくる。
彼もいつもと変わらない時間に起きていたんだと思い、自然と笑みが溢れる。
踊り場付近で少し立ち止まり、竹刀を振るう逞しい後ろ姿を見つめていた。いつもと違う上下濃紺の羽織袴は新鮮で、ピンと伸びた姿勢は神々しいくらい綺麗だ。
しばらく、食い入る様に見入ってしまう。
司さんはふと手を止めてこちらを振り向く。するとクルッと踵を返して階段を一段飛ばししながら、思わぬ早さでこちらに近付いて来る。
「お、おはようございます…。」
否応なく私の心拍数がドキドキと急上昇する。
「おはよう。」
爽やかな笑顔と共に、なぜが抱き抱えられてしまう。
「ひゃっ⁉︎」
びっくりしてしがみつくと、笑いながら司さんは私を抱えたまま軽々と階段を降りて、あっという間に応接間のソファまで運ばれる。
「もっとのんびり寝ていれば良いのに、莉子は早起きだな。」
「…いつも、同じ時間に目が覚めてしまうんです。」
ぼぉーっとした頭でそう返事を返すのが精一杯だった。
彼はどこからか毛布を持って来て、昨夜と同じように私が寒くないようにと肩から羽織らせてくれる。
「毎日の習慣は凄いな…
俺も竹刀を振らないと、結局朝が始まらない。」
そう言って、当たり前のように暖炉の薪を増やしたり、暖かい白湯を汲んで私に渡してくれる。
そんな何気無い優しさに心が温かくなる。
「ありがとう、ございます…。竹刀と道着はこちらにも置いてあるんですね…。」
回らない頭で、湯呑みを受け取りながら、どうでも良い事ばかりをぽつんと聞いてしまうのに、
「いや、用意するような頼んだ。竹刀を振るわないと、調子が整わないから意外と大事な日課なんだ。自分の物は後から荷物と一緒に届く。」
司さんはそんな私のたわいも無い話しでも拾って、ちゃんと答えをくれる。それだけでただ嬉しくて、どうしても笑顔になってしまう。
すると突然、軽く頬に口付けをされて、ビックッと驚きドキッと心臓が踊る。
「悪い、朝から莉子が可愛すぎて我慢出来なかった。」
爽やかな笑顔を向けられて、そっと頬を撫ぜられキュンと胸が締め付けられる。
「まだ、横になってろ。」
そう言ったかと思うと、また彼は足早に竹刀を振るいにいなくなってしまった。
なぜこんなにかっこいいんだろう…。
朝から完璧で、ダメなところなんて一つも無い。
私だけじゃない…
きっとどんな人だって好きになってしまう。
そう、私は…司さんが好き…なんだ。
政略結婚でありながら、決して義務的ではない感情が溢れ出してくる。
例え彼にとっては罪滅ぼしの同情からだとしても…。
もう、いつのタイミングか分からないけど、気付けば、彼以外考えれないほど好きになっていた。
結婚指輪を見つめながら、自然とそう思う。
少しでも彼の役に立てるよう、精一杯頑張ろうと…思う。
しばらく毛布に包まりながら、暖炉の薪がパチパチと燃えるのをボーっと見つめていると、穏やかな流れる時間の中で彼の優しさに包まれながら、いつの間にかまた眠りに落ちてしまっていた。
毎日の習慣で6時丁度に目を覚ます。
けれど、キンと冷えた空気にベッドから出る勇気を奪われる。司さんは起きているだろか?
ふと思い、耳を澄ます。
長谷川家に居た時の司さんは、毎朝の鍛練はお休みの日でも必ずしていた。
昨夜は咎める者はいないのだから、起こさなくて良いと言われたけれど…。
耳を澄まして隣の部屋の物音を探るが特に何も聞こえてこない。広い部屋に孤独を感じ、急いで着物に着替えて部屋を出る。
階段を降りて行くと、玄関ホールの方からビュンビュンと竹刀を振るう音が聞こえてくる。
彼もいつもと変わらない時間に起きていたんだと思い、自然と笑みが溢れる。
踊り場付近で少し立ち止まり、竹刀を振るう逞しい後ろ姿を見つめていた。いつもと違う上下濃紺の羽織袴は新鮮で、ピンと伸びた姿勢は神々しいくらい綺麗だ。
しばらく、食い入る様に見入ってしまう。
司さんはふと手を止めてこちらを振り向く。するとクルッと踵を返して階段を一段飛ばししながら、思わぬ早さでこちらに近付いて来る。
「お、おはようございます…。」
否応なく私の心拍数がドキドキと急上昇する。
「おはよう。」
爽やかな笑顔と共に、なぜが抱き抱えられてしまう。
「ひゃっ⁉︎」
びっくりしてしがみつくと、笑いながら司さんは私を抱えたまま軽々と階段を降りて、あっという間に応接間のソファまで運ばれる。
「もっとのんびり寝ていれば良いのに、莉子は早起きだな。」
「…いつも、同じ時間に目が覚めてしまうんです。」
ぼぉーっとした頭でそう返事を返すのが精一杯だった。
彼はどこからか毛布を持って来て、昨夜と同じように私が寒くないようにと肩から羽織らせてくれる。
「毎日の習慣は凄いな…
俺も竹刀を振らないと、結局朝が始まらない。」
そう言って、当たり前のように暖炉の薪を増やしたり、暖かい白湯を汲んで私に渡してくれる。
そんな何気無い優しさに心が温かくなる。
「ありがとう、ございます…。竹刀と道着はこちらにも置いてあるんですね…。」
回らない頭で、湯呑みを受け取りながら、どうでも良い事ばかりをぽつんと聞いてしまうのに、
「いや、用意するような頼んだ。竹刀を振るわないと、調子が整わないから意外と大事な日課なんだ。自分の物は後から荷物と一緒に届く。」
司さんはそんな私のたわいも無い話しでも拾って、ちゃんと答えをくれる。それだけでただ嬉しくて、どうしても笑顔になってしまう。
すると突然、軽く頬に口付けをされて、ビックッと驚きドキッと心臓が踊る。
「悪い、朝から莉子が可愛すぎて我慢出来なかった。」
爽やかな笑顔を向けられて、そっと頬を撫ぜられキュンと胸が締め付けられる。
「まだ、横になってろ。」
そう言ったかと思うと、また彼は足早に竹刀を振るいにいなくなってしまった。
なぜこんなにかっこいいんだろう…。
朝から完璧で、ダメなところなんて一つも無い。
私だけじゃない…
きっとどんな人だって好きになってしまう。
そう、私は…司さんが好き…なんだ。
政略結婚でありながら、決して義務的ではない感情が溢れ出してくる。
例え彼にとっては罪滅ぼしの同情からだとしても…。
もう、いつのタイミングか分からないけど、気付けば、彼以外考えれないほど好きになっていた。
結婚指輪を見つめながら、自然とそう思う。
少しでも彼の役に立てるよう、精一杯頑張ろうと…思う。
しばらく毛布に包まりながら、暖炉の薪がパチパチと燃えるのをボーっと見つめていると、穏やかな流れる時間の中で彼の優しさに包まれながら、いつの間にかまた眠りに落ちてしまっていた。