冷酷な御曹司は虐げられた元令嬢に純愛を乞う
この後、寝過ごしてしまった莉子が飛び起き、ソファから落ちそうになった事を除けば、穏やかで満ちたりた時間をお互い過ごす事が出来た。

後から届いた沢山の食材によって、夕飯は温かな鍋を2人お腹が一杯になるまで食べた。

終始笑顔の司が一緒に後片付けを手伝ってくれて、それぞれの部屋に戻る。

莉子は部屋にあるバスタブに浸かりながら、今日1日を思い出し、なんだか1人が寂しくなってしまう。

隣の部屋にいる司にまたすぐ会いたいと、ほんの少し離れただけで思ってしまうのだ。

慣れなければ…
仕事が始まれば忙しい司はきっとあまり帰って来れない。それに、ずっと今まで1人きりだったのだからどうって事ないはずよ。

自分にそう言い聞かせて、莉子はバスタブにぶくぶくと潜り邪心を払う。

一方司は軽くシャワーを浴び、部屋で1人天井を睨み考えていた。

明日から籍を入れれば晴れて夫婦だ。

莉子の心はどうあれ、少しでも夫婦として近付く為に
部屋が別々というのはどうだろうか。

俺に慣れて貰う為にも、今日から一緒の部屋を使おうと提案しようかと思案する。

怖がらせてはいけないが、かといって今日はずっと2人きりだったのだから、もっと近付くには恰好のチャンスだ。

1人あれこれと葛藤する。

思えば、一日中仕事のことを忘れる事なんて今まであっただろうか?

気付けば莉子の事で頭が一杯だ。

彼女の一喜一憂だけが気になり、しなくても良いお節介ばかりを妬いてしまう。自分にそんな日が来るなんて思ってもいなかった。

そんな事を考えながら、ベッドの上で1人天井を睨む。

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