冷酷な御曹司は虐げられた元令嬢に純愛を乞う
それから2人将棋盤を囲み、しばらく将棋を楽しむ。

思っていた以上に莉子は将棋が出来たため、司も少し苦戦した。

「父上の教えがしっかりしてたんだな。なかなか筋がいいと思う。俺もそこまで強くは無いが、負けたら恥だと頭を使った。」

何とか勝てて素直に気持ちを露とする司が、なんだか子供に見えてかわいいと思ってしまう。

「負けたのに嬉しそうだな。」

「司さんに追いつけそうなものが見つかったのが嬉しいんです。」
そう言ってふふふと笑う莉子が可愛い。

「もうひと勝負するか?」
楽しそうな莉子を見て思わずそう言うと、

「はい。」
と、莉子が嬉しそうに答える。

将棋はその後三戦もしたけど、いつも莉子がギリギリの所で負けてしまった。

気付けば12時を回っていて、さすがに莉子も眠そうだ。

「そろそろ寝るか。」

司は莉子を抱き上げベッドに運び、暖炉に薪を多めに焚べて、朝まで寒く無いようにと気遣いを忘れない。

「眠るまで側にいるから、安心して寝ろ。」
司はベッドの近くに椅子を運び腰掛ける。

「あの…良かったら一緒に入りますか?」
少し遠慮気味に莉子がそう言う。

大きなベッドは2人充分寝られる広さだが、事の重大さを彼女は果たして分かっているのだろうか?と司は疑問に思う。

そのくらい信頼されているのか…?それとも試されているのか?

一瞬躊躇して、さすがに言葉を迷う。

「…ごめんなさい。変な事を言いました…。」
莉子もさすがに思うところがあったのか、バッと布団を顔まで被って隠れてしまう。

「いろいろと…問題がある誘いだが…。
明日には夫婦になる訳だし…。」

少しの葛藤の後、司は心を決めて電気を消して、ランプの灯りを頼りに同じベッドにそっと潜り込む。
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