冷酷な御曹司は虐げられた元令嬢に純愛を乞う
(司side)

俺は部屋に戻り独りベッドに入ると、寂しいのは俺の方かもしれないな、と深い溜め息を吐く。

籍を入れて早いもので1ヶ月。

少しずつでも莉子との距離を縮める為に、一緒に寝るようになったのだが、口付けをするだけで抱きしめて眠る日々は、正直忍耐の連続だった。

だけど、莉子の柔らかな感触だとか温もりだとか、可愛く眠る寝息だとか…全てに癒され不思議と安眠出来ていた。

しかし、俺だって健全な男なのだから好きな女子を目の前にして、抱きたいと思うし勝手に身体が反応してしまう時だってあるのだ。

後一歩のところでなんとか理性を保っていられるのは、彼女からやっと得られた信頼を失いたくないという思いだけだ。

事を急ぎ彼女の心を置き去りにしたら、きっと取り返しがつかないほど、遠くに離れてしまいそうで怖いのだ。

彼女からみたらこの結婚を政略結婚に過ぎないのだから…。

そう仕向けて結婚に導いたのは、他でもないこの俺なのだから、本当の気持ちを打ち明けられず、かといって既に手離す事など到底出来ない。

彼女を愛している。

その気持ちだけが日に日に大きく膨らんで、今にも溢れ出しそうだ。

彼女の全てを守りたい。
もう2度と辛い事が無いように、誰かの犠牲になる事が無いように…。

モヤモヤと晴れない気持ちを抱いて今夜は眠れそうも無いと、また深いため息を吐く。
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