冷酷な御曹司は虐げられた元令嬢に純愛を乞う
こんなにも、仕事が手に付かない日が俺に来るとは思わなかった。
莉子の事が気掛かりで仕事どころでは無い。
もっと落ち着いた時間に告白するべきだったと後悔までし始める始末だ。
それでも仕事をこなさなければならないと、無理矢理意識を仕事に戻す。
「正利君、この後英国の貿易商社社長ウィリアム・ガードナーと会食の予定がある。英国に興味があるだろう。良い機会だから付いて来るか?」
支店長室に正利を呼んで言葉を交わす。
「はい、是非お供したいのですが…英語が喋れませんが大丈夫でしょか?」
「問題無い。彼等は日本語が話せる。後、営業部課長の沢森と係長の生田、統括本部長の金本も同席する。」
伝達事項のようにそう告げる。
「凄い面々ですね…。その場に僕を選んでくださりありがとうございます。」
正利は意気揚々と返事をする。
彼に機会の場があるならば、これから幾度でも与えよう。未来ある社員を育てる事も俺の仕事の内だ。
♦︎♦︎♦︎♦︎
ウィリアムズ夫妻との会食は高級ホテルの最上階個室で行われた。
思いの外豪華な席に、正利は少し気遅れしながらついて来る。
このホテルの洋食は絶品だと言う事だ。夜景も綺麗で横浜の港が一望出来るらしいから、一度莉子を連れて行きたいと思っていた。
下見を兼ねて今回の会食はここにしたのだが、私情を含んだ場所決めは、ここだけの話し職権濫用なのかもしれないと、苦笑いする自分がいる。
困った事に、最近はどんな事にだって俺の思考は彼女に繋がってしまうから、結婚してからというもの以前からの知り合いに、結婚して変わりましたねと言われる事が増えた。
良い傾向だと受け止めておこう…。
「…こんな豪華な会食に、僕みたいな新参者が参加してしまって大丈夫でしょうか?」
思考を莉子に支配されていた俺を、正利君の一言で我に戻る。
「怖気付いたのか?
今日は顔を覚えて貰えば上出来だから、堂々としていてくれたら、たらそれで良い。」
統括本部長の金本が叱咤激励する。
ウィリアムズ夫妻は気さくな方達だが、取引先としてももっとも重要な会社だ。今後の需要や流行りなどの情報はとても興味深く、有意義な時間となった。
彼等は正利君が貴族出身者であると言う事に興味を持ち、しかも話をしていくうちに、父親の森山伯爵を知っていたようで痛く喜んでいた。
亡くなっても尚、義父を慕ってくれる人が未だにいる事に驚き、その偉大さを知る。
「私も、義父に一度会って見たかったと、このように彼の生前を知る方の話しを聞くたびに思います。」
俺はウィリアムズ夫妻にそう伝え、彼等もまた森山伯爵の事を懐かしみ思い出に浸る。
そして話しはその娘である莉子の事になる。
莉子の事が気掛かりで仕事どころでは無い。
もっと落ち着いた時間に告白するべきだったと後悔までし始める始末だ。
それでも仕事をこなさなければならないと、無理矢理意識を仕事に戻す。
「正利君、この後英国の貿易商社社長ウィリアム・ガードナーと会食の予定がある。英国に興味があるだろう。良い機会だから付いて来るか?」
支店長室に正利を呼んで言葉を交わす。
「はい、是非お供したいのですが…英語が喋れませんが大丈夫でしょか?」
「問題無い。彼等は日本語が話せる。後、営業部課長の沢森と係長の生田、統括本部長の金本も同席する。」
伝達事項のようにそう告げる。
「凄い面々ですね…。その場に僕を選んでくださりありがとうございます。」
正利は意気揚々と返事をする。
彼に機会の場があるならば、これから幾度でも与えよう。未来ある社員を育てる事も俺の仕事の内だ。
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ウィリアムズ夫妻との会食は高級ホテルの最上階個室で行われた。
思いの外豪華な席に、正利は少し気遅れしながらついて来る。
このホテルの洋食は絶品だと言う事だ。夜景も綺麗で横浜の港が一望出来るらしいから、一度莉子を連れて行きたいと思っていた。
下見を兼ねて今回の会食はここにしたのだが、私情を含んだ場所決めは、ここだけの話し職権濫用なのかもしれないと、苦笑いする自分がいる。
困った事に、最近はどんな事にだって俺の思考は彼女に繋がってしまうから、結婚してからというもの以前からの知り合いに、結婚して変わりましたねと言われる事が増えた。
良い傾向だと受け止めておこう…。
「…こんな豪華な会食に、僕みたいな新参者が参加してしまって大丈夫でしょうか?」
思考を莉子に支配されていた俺を、正利君の一言で我に戻る。
「怖気付いたのか?
今日は顔を覚えて貰えば上出来だから、堂々としていてくれたら、たらそれで良い。」
統括本部長の金本が叱咤激励する。
ウィリアムズ夫妻は気さくな方達だが、取引先としてももっとも重要な会社だ。今後の需要や流行りなどの情報はとても興味深く、有意義な時間となった。
彼等は正利君が貴族出身者であると言う事に興味を持ち、しかも話をしていくうちに、父親の森山伯爵を知っていたようで痛く喜んでいた。
亡くなっても尚、義父を慕ってくれる人が未だにいる事に驚き、その偉大さを知る。
「私も、義父に一度会って見たかったと、このように彼の生前を知る方の話しを聞くたびに思います。」
俺はウィリアムズ夫妻にそう伝え、彼等もまた森山伯爵の事を懐かしみ思い出に浸る。
そして話しはその娘である莉子の事になる。