冷酷な御曹司は虐げられた元令嬢に純愛を乞う
司はそんな莉子の足元にしゃがみ込み、ヒールを脱がせてそっと足を持ち上げ、履いていた靴下まで脱がしてしきりに足を見つめてくる。

莉子は突然の司の行動に戸惑いを隠しきれない。

「ああ、やっぱり…。小指が擦れて赤くなっている。痛く無いか?履き慣れない靴だから、気を付けないと豆が出来て潰れてしまう。」

痛々しそうな顔で見上げてくる司とは正反対に、莉子は恥ずかしくなって、動揺して顔が真っ赤になってしまう。

「あ、足を…離して下さい。だ、大丈夫です。痛くありません。」
必死になって抵抗するのに、なかなか離してくれずジタバタしてしまう。

「気休めだが…風呂上がりに軟膏でも塗っておこう。このままだと皮が剥がれて、歩くのも困難になってしまう。靴の高さをもう少し低い物に変えてもらうべきだ。」

「でも…この高さじゃないと、背の高い司さんと釣り合わないって…若旦那が…。」

「俺が無駄に高いせいで、莉子に痛い思いをさせているのか…不本意だな。」
司はため息を吐きながら、立膝を崩して目の前で胡座をかく。

反対側の足もくまなく確認しながら、何か思案しているようだ。

莉子はされるままでいながらも、恥ずかしく居た堪れなくて、早く離して欲しい気持ちでいっぱいだ。

そんな莉子の気持ちも知らずに、司は指先に口付けを落とす。

「つ、司さん⁉︎き、汚いですから、お辞め下さい…。」
あわあわと慌てふためき止めに入るのに、指一本一本に口付けしてくるから、居た堪れない気持ちになる。

「…司さん…。」
恥ずかしくて泣きそうな莉子を尻目に、

「莉子の全てが愛おしくて、大事なんだ。」
と、真剣な面持ちで言ってくる。

「せめて靴を…つま先がもっと丸い物に変えよう。
明日さっそく若旦那に伝えておくから。
…亜子殿は大丈夫だろうか。とりあえず、2人分お願いしよう。」

揺るがない決心のようにそう言って、やっと足を解放してくれた。

「わ、分かりました…亜子ちゃんの足も、明日見てみますね。」
莉子は消え入りそうな声でそう言うのが精一杯だ。

真っ赤になった顔を両手で隠して、俯いたまま動けなくなってしまった。
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