冷酷な御曹司は虐げられた元令嬢に純愛を乞う
瞬間、気を失ったのか…

遠くで莉子の名を呼ぶ司の声が聞こえてくる。

その声の方に手を伸ばすと、そっと抱きしめてくれるからホッと安心して、莉子は意識を手放した。


朝、ザァーザァーと波の音が聞こえたように思い、目が覚める。

薄らと瞼を開けると、すぐ側に司の心配顔。

昨日の事がまるで夢のように思えて手を伸ばすと、
ぎゅっと抱きしめられて、司の暖かな腕に包まれホッと安心する。

「良かった…このまま目覚めなかったらと心配した。」
大きく司がフーッと息を吐いて安堵する。

「ごめんなさい…心配させてしまいましたか?
…凄く幸せな夢を見ていた気がします…。」

まだ、覚めやらぬ頭でそう言って莉子が微笑みを浮かべる。

「人の気も知らないで…。」
苦笑いした司は呆れながらも横になって、莉子を抱き寄せ、

「日の出前だ。まだ…寝れる。」
そう言ったかと思うと、やっと安心出来たのか直ぐに規則正しい寝息が聞こえる。

ちょっと待って…私だけ裸だ…。
莉子は下着一つ着ていなかった事に気付く。

ただ、司によってぐるぐると毛布が巻かれている状態だ。

冴えてくる意識の中で莉子は1人狼狽するが、やっと寝れたであろう司を起こす事も忍び無く。

身動きも出来ずじっとしているしか無くて…やがてまた眠りに落ちた。
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