冷酷な御曹司は虐げられた元令嬢に純愛を乞う
玄関の呼び鈴が鳴り、若旦那様が顔を出す。
「今晩は。今夜はお招きどうもありがとう。」
若旦那様は手土産まで持参でやって来てくれた。
「急にお声がけしてしまい申し訳ありませんでした。
今夜は日頃のお礼も兼ねてと思いまして手土産まで…お気遣いありがとうございます。」
私は手土産を頂き丁寧にお礼をする。
「いえいえ、僕はホテルに帰って1人寂しく夕飯を食べるだけだったから、呼んでもらえて嬉しいよ。」
本当に嬉しそうな若旦那様にホッとする。
麻里子さんの紹介して、司さんが帰って来るまで2人を応接間に通し、しばしみんなで会話を楽しむ。
しばらくすると司さんの車の音が聞こえて、私は急ぎ玄関先までお出迎えに行くと、お兄様を伴ってこちらに向かって来る。
「お帰りなさいませ。お仕事お疲れ様でした。
お兄様もご一緒だったんですね。」
「丁度帰りが一緒になったから誘ったんだ。」
「すいません…急な話しでご迷惑じゃなかったですか?」
「どうせ麻里子のわがままだろう。莉子が気にする事は無い。」
優しく笑いかけられて、少し安堵する。
司さんはその足で応接間に行き、若旦那様達に挨拶をして兄を紹介してくれる。
彼は和やかな感じで少し会話を交わし、着替えると言うので、私もお手伝しようと早歩きでその後ろを着いて行く。
支度部屋に入ると、途端にここ数日のぎこちなさが湧き上がり、2人っきりの空間に緊張してしまう。
「中華街の散策は楽しかったか?」
不意に司さんの方から声をかけてくれて、
「はい、とっても。いろいろ食べ歩きをして、沢山のお店を見て周りました。」
嬉しくて、つい笑顔が溢れてしまう。
すると突然、引き寄せられて気づけば彼の暖かな腕の中、心臓がドキッと高鳴る。
「あ、あの…若旦那様の事急にすいませんでした。」
落ち着かない心でなんとか言葉を紡ぐ。
「気にするな。若旦那には礼もしたかったから丁度良い。それよりも、急にもてなす事になって、食事の支度が大変だったんじゃないか?」
今朝までの素っ気ない態度とは違い、優しい言葉をかけられて、私は泣きそうになるくらい心が震える。
「…大丈夫です。2人共手伝ってくれたので。それに、私も妹も…若旦那様に何かお礼がしたかったので…。」
彼の香りに包まれて、もう心臓は破裂しそうなくらいだ。なのに腕が緩む事はなく、そのままの体勢に戸惑いこっそり見上げてみる。
目線が1番近くで合うその瞬間、時間が止まったかのような不思議な感覚が2人を包む。
「…何か欲しいものは買えたか?」
時間を動かすかのように、そっと司さんが話しかけてくる。
「は、はい…。司さんにと思い、ネクタイとハンカチと靴下を買ってきました。」
「自分の物は買わなかったのか?」
「えっと…欲しいものがなかなか決まらず、麻里子さんがレースのリボンを勧めてくれたので…それを買いました。」
「もっといろいろ買えば良かったのに…。麻里子は容赦なかっただろ?」
フッと笑う彼が眩しくて、これ以上目を合わせていられない。
「明日、麻里子を駅まで送った後に買い物に行こう。」
「はい…。」
ぎゅっと抱きしめられて、1週間ぶりの彼の体温にドキドキしながらも安堵した。
私がこの1週間モヤモヤ悩んでいたのは何だったんだろう…。触れられないことにこんなにも不安になって、触れられたことにこんなにも幸せになる。
気付けば私の心の大半は彼に埋め尽くされている。
どうしようもなく愛しくて、大切な人だと実感する。
「ずっとこうしていたいが…そろそろ麻里子が急かして来そうだ。」
そう言って離れてしまう彼をもの寂しく思いながら、無理矢理気持ちを切り替えて、
「皆さんお腹を空かしているはずです。夕飯の準備をしますね。」
と、笑顔を作り支度部屋を後にする。
「今晩は。今夜はお招きどうもありがとう。」
若旦那様は手土産まで持参でやって来てくれた。
「急にお声がけしてしまい申し訳ありませんでした。
今夜は日頃のお礼も兼ねてと思いまして手土産まで…お気遣いありがとうございます。」
私は手土産を頂き丁寧にお礼をする。
「いえいえ、僕はホテルに帰って1人寂しく夕飯を食べるだけだったから、呼んでもらえて嬉しいよ。」
本当に嬉しそうな若旦那様にホッとする。
麻里子さんの紹介して、司さんが帰って来るまで2人を応接間に通し、しばしみんなで会話を楽しむ。
しばらくすると司さんの車の音が聞こえて、私は急ぎ玄関先までお出迎えに行くと、お兄様を伴ってこちらに向かって来る。
「お帰りなさいませ。お仕事お疲れ様でした。
お兄様もご一緒だったんですね。」
「丁度帰りが一緒になったから誘ったんだ。」
「すいません…急な話しでご迷惑じゃなかったですか?」
「どうせ麻里子のわがままだろう。莉子が気にする事は無い。」
優しく笑いかけられて、少し安堵する。
司さんはその足で応接間に行き、若旦那様達に挨拶をして兄を紹介してくれる。
彼は和やかな感じで少し会話を交わし、着替えると言うので、私もお手伝しようと早歩きでその後ろを着いて行く。
支度部屋に入ると、途端にここ数日のぎこちなさが湧き上がり、2人っきりの空間に緊張してしまう。
「中華街の散策は楽しかったか?」
不意に司さんの方から声をかけてくれて、
「はい、とっても。いろいろ食べ歩きをして、沢山のお店を見て周りました。」
嬉しくて、つい笑顔が溢れてしまう。
すると突然、引き寄せられて気づけば彼の暖かな腕の中、心臓がドキッと高鳴る。
「あ、あの…若旦那様の事急にすいませんでした。」
落ち着かない心でなんとか言葉を紡ぐ。
「気にするな。若旦那には礼もしたかったから丁度良い。それよりも、急にもてなす事になって、食事の支度が大変だったんじゃないか?」
今朝までの素っ気ない態度とは違い、優しい言葉をかけられて、私は泣きそうになるくらい心が震える。
「…大丈夫です。2人共手伝ってくれたので。それに、私も妹も…若旦那様に何かお礼がしたかったので…。」
彼の香りに包まれて、もう心臓は破裂しそうなくらいだ。なのに腕が緩む事はなく、そのままの体勢に戸惑いこっそり見上げてみる。
目線が1番近くで合うその瞬間、時間が止まったかのような不思議な感覚が2人を包む。
「…何か欲しいものは買えたか?」
時間を動かすかのように、そっと司さんが話しかけてくる。
「は、はい…。司さんにと思い、ネクタイとハンカチと靴下を買ってきました。」
「自分の物は買わなかったのか?」
「えっと…欲しいものがなかなか決まらず、麻里子さんがレースのリボンを勧めてくれたので…それを買いました。」
「もっといろいろ買えば良かったのに…。麻里子は容赦なかっただろ?」
フッと笑う彼が眩しくて、これ以上目を合わせていられない。
「明日、麻里子を駅まで送った後に買い物に行こう。」
「はい…。」
ぎゅっと抱きしめられて、1週間ぶりの彼の体温にドキドキしながらも安堵した。
私がこの1週間モヤモヤ悩んでいたのは何だったんだろう…。触れられないことにこんなにも不安になって、触れられたことにこんなにも幸せになる。
気付けば私の心の大半は彼に埋め尽くされている。
どうしようもなく愛しくて、大切な人だと実感する。
「ずっとこうしていたいが…そろそろ麻里子が急かして来そうだ。」
そう言って離れてしまう彼をもの寂しく思いながら、無理矢理気持ちを切り替えて、
「皆さんお腹を空かしているはずです。夕飯の準備をしますね。」
と、笑顔を作り支度部屋を後にする。