冷酷な御曹司は虐げられた元令嬢に純愛を乞う
そんな風に過ごしていると、司をホール入口で見つけアッと思う。

思わず吸い寄せられそうになるのをグッと我慢して、この場を離れる理由を探す。

その間にも、司はどちらかの綺麗な令嬢に話しかけられている姿が見えるから、気持ちだけが急いてしまう。

「あの、すいません。私、お手洗いに行ってきます。どうぞお2人でお食事を楽しんでいて下さい。」

出来るだけ悟られぬよう、朗らかに話しその場を笑顔であとにする。
そして足早に司がいた方へと行こうとするのに、

「莉子!」
と、突然名前を呼ばれて、驚き振り返る。

「やっと見つけた、莉子は俺と一緒になるはずだったのに…父に聞いた時は驚いた。ここはお前のいる場所ではない一緒に帰るんだ。」
急に腕を取られて、心が強張る。

そこに居たのは東雲家の嫡男、清貴だった。

「…清貴様…何故?」

「それはこっちが聞きたい。大学を出たら莉子をくれてやると親父に言われていたのに、何故何も言わず勝手に出て行った?お前は俺のだ!昔から決まっている。」
強引に腕を引っ張られ、莉子は昔の記憶が蘇り恐怖に慄く。

「あの…私、け、結婚をしまして…。」
どうにかして清貴の手を振り払いたいのに、力が強くて、莉子には敵わない。

身体も震えだし、目には涙を溜めていた。

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