冷酷な御曹司は虐げられた元令嬢に純愛を乞う
「莉子様は今どちらに?息災でいらっしゃいますか?」
琴乃は莉子の事をずっと気にかけていた。
紀香の怒りをかって琴乃が首になるまでずっと、彼女を陰ながら支えていた。
13歳になり急に身長が伸びた莉子に、要らなくなった着物をあげたりもした。琴乃自身決して裕福な家庭で育った訳ではない。
農家の三女に生まれ食いぶちを減らす為、奉公に出された身だったから、莉子にしてあげられる事はそんなに無かった。
だから、そんな彼女が莉子を庇い守り続ける事は不可能だったのだ。
「彼女は今、私の家で保護しています。二度と東雲家には帰らせない。帰さない覚悟でおりますのでご安心して下さい。
貴方の話しを聞いてその気持ちがより強くなりました。」
「それを聞けて心底ホッとしました。どうか莉子様の事お助け下さい。よろしくお願い致します。」
琴乃は司に頭を深く下げてまた、ハラハラと涙を流し
始める。
小さかった莉子がどうにか生き延びて来れたのは、琴乃が寄り添い一緒に泣いてくれたからだ。そう思うと、琴乃に対して深い情が湧く。
「貴方には感謝しかない。幼い彼女の味方になってくれた事、大変嬉しく思います。もし、何か困った事があったら是非、私を訪ねて来て下さい。」
司は名刺と一緒に白い封筒を、胸元の内ポケットから取り出して琴乃に渡す。
「これはここまで出向いて頂いたお礼だと思って受け取って下さい。」
その封筒には100円札が入っていた。
琴乃は驚き突き返す。
「こんな大金受け取れません。」
100円といえば車が1台買えるくらいの価値がある。
両手をブンブンと振って琴乃は受け取る事を拒む。
「彼女の…莉子さんの命に比べたら大した金額ではありません。どうか、お子さんを小学校に出してあげて下さい。きっと彼女も貴方の幸せを願っている筈だ。」
「いいえ、私は…あの家から逃げた身です。
彼女を一人残してしまったのです…。申し訳なくて…合わせる顔もありません。
莉子様は逃げる事さえ出来なかったのに…私にはこんな大金を頂く事は到底出来ません…。」
琴乃は首を横に振って泣き続ける。
しまいには隣に寝かせていた赤子も目を覚まし泣き始めるから、男2人はどうしたものかと頭を抱える。
「私も差し出した手前、持って帰る事は出来ません。これは既に貴方のものだ。好きに使って下さい。」
時間も段々迫ってくる。
「鈴木、2人を家まで送ってくれ。俺は人力車か電車で戻るから大丈夫だ。」
司がポケットから懐中時計を取り出して見ると、針は11時まで後20分もなかった。
「承知しました。お任せください。」
鈴木は司を見送る為に立ち上がり、頭を下げる。
泣いていた琴乃も赤子を抱きながら慌てて立ち上がり、
「あの…ハンカチをすいません、お借りしてしまって…。」
もはや涙でグシャグシャになったハンカチを、返すにも忍びないと躊躇する。
琴乃は莉子の事をずっと気にかけていた。
紀香の怒りをかって琴乃が首になるまでずっと、彼女を陰ながら支えていた。
13歳になり急に身長が伸びた莉子に、要らなくなった着物をあげたりもした。琴乃自身決して裕福な家庭で育った訳ではない。
農家の三女に生まれ食いぶちを減らす為、奉公に出された身だったから、莉子にしてあげられる事はそんなに無かった。
だから、そんな彼女が莉子を庇い守り続ける事は不可能だったのだ。
「彼女は今、私の家で保護しています。二度と東雲家には帰らせない。帰さない覚悟でおりますのでご安心して下さい。
貴方の話しを聞いてその気持ちがより強くなりました。」
「それを聞けて心底ホッとしました。どうか莉子様の事お助け下さい。よろしくお願い致します。」
琴乃は司に頭を深く下げてまた、ハラハラと涙を流し
始める。
小さかった莉子がどうにか生き延びて来れたのは、琴乃が寄り添い一緒に泣いてくれたからだ。そう思うと、琴乃に対して深い情が湧く。
「貴方には感謝しかない。幼い彼女の味方になってくれた事、大変嬉しく思います。もし、何か困った事があったら是非、私を訪ねて来て下さい。」
司は名刺と一緒に白い封筒を、胸元の内ポケットから取り出して琴乃に渡す。
「これはここまで出向いて頂いたお礼だと思って受け取って下さい。」
その封筒には100円札が入っていた。
琴乃は驚き突き返す。
「こんな大金受け取れません。」
100円といえば車が1台買えるくらいの価値がある。
両手をブンブンと振って琴乃は受け取る事を拒む。
「彼女の…莉子さんの命に比べたら大した金額ではありません。どうか、お子さんを小学校に出してあげて下さい。きっと彼女も貴方の幸せを願っている筈だ。」
「いいえ、私は…あの家から逃げた身です。
彼女を一人残してしまったのです…。申し訳なくて…合わせる顔もありません。
莉子様は逃げる事さえ出来なかったのに…私にはこんな大金を頂く事は到底出来ません…。」
琴乃は首を横に振って泣き続ける。
しまいには隣に寝かせていた赤子も目を覚まし泣き始めるから、男2人はどうしたものかと頭を抱える。
「私も差し出した手前、持って帰る事は出来ません。これは既に貴方のものだ。好きに使って下さい。」
時間も段々迫ってくる。
「鈴木、2人を家まで送ってくれ。俺は人力車か電車で戻るから大丈夫だ。」
司がポケットから懐中時計を取り出して見ると、針は11時まで後20分もなかった。
「承知しました。お任せください。」
鈴木は司を見送る為に立ち上がり、頭を下げる。
泣いていた琴乃も赤子を抱きながら慌てて立ち上がり、
「あの…ハンカチをすいません、お借りしてしまって…。」
もはや涙でグシャグシャになったハンカチを、返すにも忍びないと躊躇する。