冷酷な御曹司は虐げられた元令嬢に純愛を乞う
悶々としながら、自分の部屋となってしまっている客間で時間を潰すしかない。
雨で濡れた髪はもう乾いたし、特に部屋に居てもやる事が無いから、ここに本でもあったら時間が潰せるのになと、なんとなく手持ち無沙汰を少し嘆く。
こんな事今まで無かった…。
東雲家にいる時は仕事が引っ切り無しにあり、息つく暇も無い程一日中動き回っていた。
時には夕飯を食べる時間さえも無くて、3食ちゃんと食べられる日なんて、月のうち数える程しかなかったぐらいだ。
与えられた部屋も3畳ほどの物置き小屋のような場所だった。お布団もぺたんこの使い古された煎餅布団で、冬は寒くてなかなか寝られないほどだった。
1日の最後は決まってお風呂洗いで、東雲家の人々が使う豪華な広い風呂釜を、1人で洗うのは結構な重労働だった。
そのお風呂を洗う前、少しのお湯で体を洗うのが日課だったけれど、冬は直ぐに冷めてしまい寒くて入れなかった。
それなのに、この家に来てからその生活が180度変わった。
暖かくて広い部屋にふかふかのお布団、3食昼寝付き、ついでにおやつも2回ある。
それに…働く事を禁じられて、今もこうして暇を持て余している。
こんな贅沢な生活、もうとっくの昔に忘れてしまっていた。
障子を開けて降りしきる雨を窓から眺める。
そんな当たり前のことさえ夢見たい、とつい思ってしまうほどだ。
「莉子…、居るのか?……入るぞ。」
スーと襖が開く音が聞こえ目を開ける…。
誰かが私を呼んでるみたい…
頭がぼぉーっとする…
夢を、見ていたんだ…なんて幸せな夢だんだんだろう。
「莉子?…大丈夫か⁉︎そんな寒い窓際で寝てたのか?」
着流しに半纏(はんてん)を羽織った男の人が、心配そうに覗き込んでくる。
大きな手で私の額に触れてくるから、
「…お兄様…?」
夢から覚めたばかりの冴えない頭でぼんやりと問う。
「いや…悪いが君の兄になった覚えは無い…。
…また、熱が振り返したんじゃないか?」
心配そうなその人をジーッと見つめる。
「…司様⁉︎」
ハッと目が覚めて辺りをキョロキョロと見渡す。
「…夢じゃない…?」
「夢ではないな。…どこか頭でもぶつけたか?あまり頭を動かさない方が良い。」
大きな両手で頭を抑えられて動きを止められる。
「大丈夫か?」
目と目が合って、まるで心を読み取ろうとしているかのように、じっと見つめられる。
「だ、大丈夫です…。夢を、見ていたみたいです。
…すいません気付かなくて…何度か呼ばれてましたか?」
「ああ、声をかけても返答が無いから部屋に入らせてもらった。それよりも、頭が痛いとか傷口が痛むとかないか?」
まるでお医者様のように、やたらと心配されてしまう。
「大丈夫です。お夕飯ですか?
わざわざ呼びに来て頂き、ありがとうございます。」
お礼を言って、立ち上がろうとするのに、
「ちょっと待て。」
と、司様に両肩をそっと掴まれる。
「そんなに…急に動いたらいけない。貧血気味なんだからゆっくり立ち上がらないと危ない。」
そう咎められ、
「…申し訳ありません。」
と、私は素直に謝った。
彼の腕を借りそっと立ち上がる。
少しクラっとするけど直ぐに平気になった。
「ありがとうございます。もう、大丈夫です。」
小さくお礼を言って彼を見上げる。
雨で濡れた髪はもう乾いたし、特に部屋に居てもやる事が無いから、ここに本でもあったら時間が潰せるのになと、なんとなく手持ち無沙汰を少し嘆く。
こんな事今まで無かった…。
東雲家にいる時は仕事が引っ切り無しにあり、息つく暇も無い程一日中動き回っていた。
時には夕飯を食べる時間さえも無くて、3食ちゃんと食べられる日なんて、月のうち数える程しかなかったぐらいだ。
与えられた部屋も3畳ほどの物置き小屋のような場所だった。お布団もぺたんこの使い古された煎餅布団で、冬は寒くてなかなか寝られないほどだった。
1日の最後は決まってお風呂洗いで、東雲家の人々が使う豪華な広い風呂釜を、1人で洗うのは結構な重労働だった。
そのお風呂を洗う前、少しのお湯で体を洗うのが日課だったけれど、冬は直ぐに冷めてしまい寒くて入れなかった。
それなのに、この家に来てからその生活が180度変わった。
暖かくて広い部屋にふかふかのお布団、3食昼寝付き、ついでにおやつも2回ある。
それに…働く事を禁じられて、今もこうして暇を持て余している。
こんな贅沢な生活、もうとっくの昔に忘れてしまっていた。
障子を開けて降りしきる雨を窓から眺める。
そんな当たり前のことさえ夢見たい、とつい思ってしまうほどだ。
「莉子…、居るのか?……入るぞ。」
スーと襖が開く音が聞こえ目を開ける…。
誰かが私を呼んでるみたい…
頭がぼぉーっとする…
夢を、見ていたんだ…なんて幸せな夢だんだんだろう。
「莉子?…大丈夫か⁉︎そんな寒い窓際で寝てたのか?」
着流しに半纏(はんてん)を羽織った男の人が、心配そうに覗き込んでくる。
大きな手で私の額に触れてくるから、
「…お兄様…?」
夢から覚めたばかりの冴えない頭でぼんやりと問う。
「いや…悪いが君の兄になった覚えは無い…。
…また、熱が振り返したんじゃないか?」
心配そうなその人をジーッと見つめる。
「…司様⁉︎」
ハッと目が覚めて辺りをキョロキョロと見渡す。
「…夢じゃない…?」
「夢ではないな。…どこか頭でもぶつけたか?あまり頭を動かさない方が良い。」
大きな両手で頭を抑えられて動きを止められる。
「大丈夫か?」
目と目が合って、まるで心を読み取ろうとしているかのように、じっと見つめられる。
「だ、大丈夫です…。夢を、見ていたみたいです。
…すいません気付かなくて…何度か呼ばれてましたか?」
「ああ、声をかけても返答が無いから部屋に入らせてもらった。それよりも、頭が痛いとか傷口が痛むとかないか?」
まるでお医者様のように、やたらと心配されてしまう。
「大丈夫です。お夕飯ですか?
わざわざ呼びに来て頂き、ありがとうございます。」
お礼を言って、立ち上がろうとするのに、
「ちょっと待て。」
と、司様に両肩をそっと掴まれる。
「そんなに…急に動いたらいけない。貧血気味なんだからゆっくり立ち上がらないと危ない。」
そう咎められ、
「…申し訳ありません。」
と、私は素直に謝った。
彼の腕を借りそっと立ち上がる。
少しクラっとするけど直ぐに平気になった。
「ありがとうございます。もう、大丈夫です。」
小さくお礼を言って彼を見上げる。