冷酷な御曹司は虐げられた元令嬢に純愛を乞う
どのくらい時間が経っただろうか。
蔵の重い扉が開かれる音がして、一つの灯りと共に何人かの足音が聞こえてきた。
莉子は姿勢を正し、深く頭を下げてその運命を受け止める。
足音が止まり、しばらくの沈黙の後、
「お前が、東雲紀香か?」
男の低くよく通る声が薄暗い蔵の中に響く。
「はい。私が東雲紀香でございます。」
莉子は小さな声でそれに応える。
「お前がしでかした事が、何故か全て不起訴になった。お前の親が金で解決させた事は重々承知だ。
しかし、こちら側としては耐えるに耐えかねぬ怒りだけが未だに燻っているのだ。
妹の足は未だ元には戻らず、引きずるように歩く事しか出来ないでいる。これではこの先、嫁の貰い手にも困るだろう。妹の未来をお前が奪ったのだ。母は嘆き悲しみ床に伏している。それなのに…」
怒りと悲しみに満ち溢れた男の声が、莉子の小さな身体に突き刺さる。
「それなのに…お前はのうのうと学校に通い、何事も無かったかのように生きている。
それが俺には許せない。
それ相応の罰を与えなければ気が済まない。
こちら側の心情をお前自身で受け止めるべきだと俺は思う。…そうは思わぬか?」
男の怒りを一身に浴びて、莉子は身を硬くする。
「…その通りでございます。
私が全ての元凶であり、貴方様の怒りはごもっともでございます。
妹様に多大なるご迷惑をお掛けしました事、さらにお怪我をさせてしまった事を謝罪し、またお母上様、貴方様におかれましてはその心情をお察し、誠心誠意お詫びさせて頂きたいと思います。」
莉子は頭を下げたまま、小さくしかしはっきりとした声で、紀香の代わりに頭を下げる。
「申し訳けございませんでした。」
莉子には詫びる事しか出来る事は無い。
紀香がしでかした事がどのような事なのか、詳しくは分からない。
ただ、相手方に怪我を負わせて、その怪我のせいで、未だにもこんなに家族が苦しんでいるのだ。
詫びで全てが許されるとは到底思わないが…。
「頭を上げろ。」
静かな怒りを秘めた声で男が言う。
莉子は身代わりがバレてしまう事を恐れ、それでも従わ無い訳にはいかず恐る恐る顔を上げる。
ランプの灯りで男の足元が照らされる。
こちらからでは顔までは良く見えない。
莉子の顔も向こうからではよく見えないだろうと、少し安堵する。
しかし、男の革靴がコツコツと莉子に近付いきて、また緊張する。
「言葉ではなんとでも言える。お前自身も同じような痛みを負うべきでは無いのか?」
蔵の重い扉が開かれる音がして、一つの灯りと共に何人かの足音が聞こえてきた。
莉子は姿勢を正し、深く頭を下げてその運命を受け止める。
足音が止まり、しばらくの沈黙の後、
「お前が、東雲紀香か?」
男の低くよく通る声が薄暗い蔵の中に響く。
「はい。私が東雲紀香でございます。」
莉子は小さな声でそれに応える。
「お前がしでかした事が、何故か全て不起訴になった。お前の親が金で解決させた事は重々承知だ。
しかし、こちら側としては耐えるに耐えかねぬ怒りだけが未だに燻っているのだ。
妹の足は未だ元には戻らず、引きずるように歩く事しか出来ないでいる。これではこの先、嫁の貰い手にも困るだろう。妹の未来をお前が奪ったのだ。母は嘆き悲しみ床に伏している。それなのに…」
怒りと悲しみに満ち溢れた男の声が、莉子の小さな身体に突き刺さる。
「それなのに…お前はのうのうと学校に通い、何事も無かったかのように生きている。
それが俺には許せない。
それ相応の罰を与えなければ気が済まない。
こちら側の心情をお前自身で受け止めるべきだと俺は思う。…そうは思わぬか?」
男の怒りを一身に浴びて、莉子は身を硬くする。
「…その通りでございます。
私が全ての元凶であり、貴方様の怒りはごもっともでございます。
妹様に多大なるご迷惑をお掛けしました事、さらにお怪我をさせてしまった事を謝罪し、またお母上様、貴方様におかれましてはその心情をお察し、誠心誠意お詫びさせて頂きたいと思います。」
莉子は頭を下げたまま、小さくしかしはっきりとした声で、紀香の代わりに頭を下げる。
「申し訳けございませんでした。」
莉子には詫びる事しか出来る事は無い。
紀香がしでかした事がどのような事なのか、詳しくは分からない。
ただ、相手方に怪我を負わせて、その怪我のせいで、未だにもこんなに家族が苦しんでいるのだ。
詫びで全てが許されるとは到底思わないが…。
「頭を上げろ。」
静かな怒りを秘めた声で男が言う。
莉子は身代わりがバレてしまう事を恐れ、それでも従わ無い訳にはいかず恐る恐る顔を上げる。
ランプの灯りで男の足元が照らされる。
こちらからでは顔までは良く見えない。
莉子の顔も向こうからではよく見えないだろうと、少し安堵する。
しかし、男の革靴がコツコツと莉子に近付いきて、また緊張する。
「言葉ではなんとでも言える。お前自身も同じような痛みを負うべきでは無いのか?」