ブルースター / Tweedia
 その電話の翌週、私たちは食事に行くことになった。長髪だった彼は短髪になっていて、男前の顔をさらに二割増しの魅力を加算しているように感じた。

 レストランバーでは、彼は料理を私に取り分けながらよく話していた。自分のことではなく私から言葉を引き出すような話術で、懐かしいなと、頬が緩んだ。
 警察官って、みんなこうなのかな。そう思わせるくらい、あの人と同じだったから。

 そうして杯を重ねる中、彼は私に何を求めているのか疑問が湧いた。交際をしたいのか、ただの遊びなのか。彼は文通を続けたいと言っていたから、友人としてなのかも知れなかったが、どちらにしても私は言わないとならないと思った。私はあなたにふさわしくないですよ、と。
 彼の時間を無駄にしてはならないと、酔いの回っていた私は、自嘲気味に薄く笑いながら彼に伝えた。

「私ね、五年不倫して、奥さんにバレて慰謝料払って、この前、払い終わったんですよ」

 私が笑顔でそう言うと、シーザーサラダを取り分けていた彼の手が止まった。微かに下がる口角に力を込め、顔を上げぬまま目線を寄越した彼は、目を伏せて私のグラスを見て、また私を見た。そして何かを言おうとして口を開いたが、言葉が発せられることはなかった。
 私はその姿が可笑しくて、重ねて言った。最低な女でしょ――。
 グラスを手にした私は、彼のグラスに自分のグラスを軽く当て、一気に飲み干した。

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