ブルースター / Tweedia
 彼は初めて見る目をしていた。私と目を合わせられず、不安そうに、泣きそうな目で、私を見ているようで見ていない。だが、続けた言葉は、声音が違っていた。

「俺じゃダメなら、そう言えよ」

 彼の低い声は、地を這うように冷たかった。

 私は目をギュッと瞑った。
 怒鳴られるよりも恐怖を感じる。涙が目尻に溜まっていくのがわかったが、我慢して拭うことはしなかった。
 そんな私を彼は強く抱きしめるが、彼の体温を感じて胸の奥が少し波を打ったような気がした。

 何か言わなきゃと思っていると、彼の手が私の頭を撫で始めたことに驚いて体がビクリと跳ねた。そんな私に気づいた彼のククッと笑った声が耳に流れ込んだ。
 まるで子供をあやすかのようなその手つきに、私は顔を上げ彼を見たが、私の知っているいつもの彼とは全く違う表情だった。

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