ブルースター / Tweedia
 彼は私に頬を寄せてキスをした。
 涙の跡を唇で拭うような優しいキスをしてくれたのだと思い、目を開けられないままでいた。だが唇に吐息を感じたその瞬間、彼の舌が唇を無理やりこじ開けた。慌てて目を開くと、熱い視線をこちらに向ける彼が一瞬見えたが、すぐに視界からの情報は遮断されてしまった。
 彼の舌は激しく私の口内を、まるで私を溶かすように動かしていた。時に舌を絡めたかと思うと、上顎をなぞるように舌を這わす。その度にゾクゾクとした快感が体の中を駆け巡り、彼の舌の感触に体に火が灯った。

 彼はゆっくりと体を起こして着ていたTシャツを脱ぎ捨てた。私は乱れた息を整えながら、彼の体を見ていることしか出来ない。彼はそんな私の衣服を乱暴に脱がせ、下着を剥ぎ取った。

 何も纏わない私を見下ろす彼は睨めるように体を見てから、私に再び覆い被さるように私にキスをし、唇を食むようなキスをしてから首筋へと下りていった。

 彼の唇はどこまでも熱く、いつもと違う彼に瞠目した。私を貪るように激しく体中に唇を這わせる彼に、私の体をまるで自分のものだと証明するかのように印を落としていく彼に、これが彼なんだ、本当の彼なのだと思った。
 今まで見せなかった激しい欲望が彼の中にあったのだと知った瞬間だった。鋭い目と強引さが彼の本性。心の底からゾクゾクする。

 私のいつもと違う嬌声に、彼は満足そうに口元を緩ませていた。


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