【SR】また、月明かりの下で会いましょう。
『ここは………桜木英国美術館?』
私は緊張した面持ちでハルに訊ねる。
「うん。美術館の駐車場だよ。
姫乃ちゃん…桜木財閥の一人娘なんだってね?」
ハルは車のハンドルの上で腕を組みながら、遠くを見ていた。
「どうして…それが…」
私のぎゅっと握りしめた手からは
嫌な汗が滲み出て。
「ラジオで…姫乃ちゃんの事が流れてたから。
姫野ちゃんのご両親は、君の事が大切なんだね。」
そう言うと、
車から降りて…ドアを閉めた。
そして━━━…
走って助手席のドアの前まで来てくれて、
ドアを開けてくれた。
「ほら。行こ?」
ハルは私に手を差し出す。
少しだけ赤く染まった頬。
私から外した視線。
なんだか、
ハルが可愛らしく見えた。
この時は、まだ。
黒い影が、すぐそこまで迫ってきてるなんて…
私達は知るはずもなく。