【SR】また、月明かりの下で会いましょう。




『ここは………桜木英国美術館?』

私は緊張した面持ちでハルに訊ねる。



「うん。美術館の駐車場だよ。
姫乃ちゃん…桜木財閥の一人娘なんだってね?」


ハルは車のハンドルの上で腕を組みながら、遠くを見ていた。



「どうして…それが…」

私のぎゅっと握りしめた手からは
嫌な汗が滲み出て。



「ラジオで…姫乃ちゃんの事が流れてたから。
姫野ちゃんのご両親は、君の事が大切なんだね。」

そう言うと、
車から降りて…ドアを閉めた。


そして━━━…
走って助手席のドアの前まで来てくれて、
ドアを開けてくれた。



「ほら。行こ?」

ハルは私に手を差し出す。


少しだけ赤く染まった頬。
私から外した視線。


なんだか、
ハルが可愛らしく見えた。


この時は、まだ。
黒い影が、すぐそこまで迫ってきてるなんて…

私達は知るはずもなく。






< 18 / 56 >

この作品をシェア

pagetop