【SR】また、月明かりの下で会いましょう。
私は、ハルに腕を掴まれながら…美術館の中に入る。
薄暗い照明。静かで落ち着いた、雰囲気。
昔から変わらない。
幼い頃の私は、
美術館を見るのにすぐに飽きてしまって。
美術館の一室にある図書館で、よくママに絵本を読んでもらった。
眠れぬ森の美女とヘンゼルとグレーテルが私のお気に入りだった。
この美術館には、
イギリスと日本に関係する歴史的美術品が展示されている。
今日は平日の半ばとだけあって、
美術館に来ているお客さんは少ない。
「…どうして、今日ここに?」
私は一歩前を歩くハルに訊ねる。
「前々から気になっていた美術館なんだ。
イギリスって何だか懐かしい感じがする。」
ハルは目を細めて、優しく微笑んだ。
―――2人で美術館を回る。
━━━19世紀、イギリス。このブースに入った瞬間。
………懐かしい気持ちになった。
古びた懐中時計、
三日月の形をした黒ずんだ銀色のペンダント。
まるで、使った事があるかのように━━━
懐かしかった。