【SR】また、月明かりの下で会いましょう。
「待ちなさい!姫乃!」
家の中に響き渡る、
パパの罵声━━━…
玄関に行こうとしている私を呼び止める。
私は家の中を走る。
玄関を通過し、外に出る。
ギィィィ…
重々しい家の門を開けて
暗い夜道に出た。
人気の無い住宅街を
全力で走る━━━…
「ハァ。ハァ。」
息を切らしながら。
1メートルでも、
2メートルでも…
遠くに行きたくて。
でも、やっぱり…少しだけ期待してしまった。
私の事追いかけてきてくれるんじゃないかって。
立ち止まり…
ちらっと家の方を振り返ると
開けっぱなしだったはずの門が
キチンと閉まっていて。
やっぱり。
私の事追いかけてこないんだね。
結局パパは私の事なんて
大事じゃないんだよね。
1番大事なのは世間体。
こんな夜遅くに…
夜道で娘の名前を叫びながら追いかけるなんて
それは桜木家にとっては
大変な失態だから。
じんわりと涙が浮かぶ━━━…
“私、バカみたい…”
そんな事を思って
突き当たりの角を
勢いよく走りながら
右に曲がった。
その時━━━…!
ドサッ…
「きゃ…ごめんなさい…!」