【SR】また、月明かりの下で会いましょう。
私は掌で目を擦ってから
左右に首を振った。
「目…赤いし。」
男の人は、手を伸ばし…
涙が完全に拭いきれてない私の頬に触れる。
心臓の鼓動がドクドクドクと一段と早くなる。
「こんな夜遅くに…1人でどしたの…」
まるで、私の心の内が分かっているかのように、
優しく包み込むような言葉。
この優しい言葉にツーーーと
一筋の涙が流れる。
温かくて。
あなたの手も…言葉も…
全てが。
温かくて…涙が溢れてきて。
地面に座り込み、コートの袖で顔を覆いながら、
声を押し殺して泣いた。
***
少しずつ、泣き止み…
落ち着いてきた時。
ファンファンファン…
遠くの方から聞こえてきたパトカーのサイレン音。
男の人が
そのサイレン音にビクッと反応したのが、私の頬に触れている手から伝わった。
「ごめん。俺、時間ないから…行くね。
ここ危ないから…早く家に帰んな。」
さっきと優しい口調とは違う…
少しだけ強めの口調。
あなたは
ゆっくり立ち上がり
私に背を向ける。
180センチ以上はある長身、スラッとしたシルエット。
どんどん離れていくあなたの姿━━━…
「待って!」