弱みを見せない騎士令嬢は傭兵団長に甘やかされる
「考え事?」
「少しだけ。もし、彼らに襲われたらどうしたら良いのかなぁと」
「蹴散らせばいい。もし、傷を負わせたり殺したりしたとしても、それは特に罪に問われないだろう。誰が見ても、やつらが悪く見えるだろう。が、もしかしたら、捕まった仲間のこともあるから、少しはおとなしくしている可能性もある」
ヴィルマーの答えは明確だ。そして、それは正しいのだろうと思うミリア。
「そうだと良いのですが」
「彼らを裁くことについてでも、考えている?」
「いえ……残念ながら、そういう話についてはほぼ門外漢で……わからなくはないのですが、経験がそこまで多くないので、うまく考えられません。未熟ですね……」
「ははっ!」
ぱん、とヴィルマーは手を叩いた。
「君は本当に、なんていうんだ……良い意味で、きちんと考える人なんだな」
「きちんと考える?」
「ああ。そうだ。きちんと考える。自分に出来ること、出来ないことを判断して、出来ないことを『未熟』だと言う。と言っても、人ってのは、ありとあらゆることに未熟のままであることがほとんどだし、それで誰も特に困らない。」
「……はい」
「が、君が言う『未熟』ってのは、そうではなくなろうとしている感じがする。とても好ましい」
そう言ってミリアを見る彼は、ふわりと微笑んだ。ちょうど、ミリア側から朝陽が昇り、彼は目を細める。その表情が、まるで少し照れ笑いを見せているように見え、いささか可愛い……と、ミリアは思った。
「買いかぶりですよ」
そう言って彼から目を逸らすミリアに、ヴィルマーは軽く肩を竦めて見せる。
「いやいや……まあ、ちょっと嫌な話をするとさ」
「ええ」
「未熟でなくなるために、何かを出来る。何かを知ろうと出来るっていうのかな……それが出来る環境にいたってことだ。だから、逆を言えばさ……いい生まれの人間が持っている考え方だな、って話にもなるんだが」
そのヴィルマーの発言に、ミリアはゆっくりと瞬きながら彼を見る。が、彼の表情、声音からは嫌な感じは受けない。
「いい生まれの人間でも、そんな発想にはなかなかならない。俺はそれを知っているんでね……で、話はそれだけか?」
「はい」
「そうか。頑張って来いよ」
ヴィルマーはそう笑って、ぽん、とミリアの肩に手を置いた。大きく、そして熱い手。彼の手のひらの熱が布越しでもじんわりと伝わる。それを不快と思わず、ミリアは「そうします」と答えた。
「少しだけ。もし、彼らに襲われたらどうしたら良いのかなぁと」
「蹴散らせばいい。もし、傷を負わせたり殺したりしたとしても、それは特に罪に問われないだろう。誰が見ても、やつらが悪く見えるだろう。が、もしかしたら、捕まった仲間のこともあるから、少しはおとなしくしている可能性もある」
ヴィルマーの答えは明確だ。そして、それは正しいのだろうと思うミリア。
「そうだと良いのですが」
「彼らを裁くことについてでも、考えている?」
「いえ……残念ながら、そういう話についてはほぼ門外漢で……わからなくはないのですが、経験がそこまで多くないので、うまく考えられません。未熟ですね……」
「ははっ!」
ぱん、とヴィルマーは手を叩いた。
「君は本当に、なんていうんだ……良い意味で、きちんと考える人なんだな」
「きちんと考える?」
「ああ。そうだ。きちんと考える。自分に出来ること、出来ないことを判断して、出来ないことを『未熟』だと言う。と言っても、人ってのは、ありとあらゆることに未熟のままであることがほとんどだし、それで誰も特に困らない。」
「……はい」
「が、君が言う『未熟』ってのは、そうではなくなろうとしている感じがする。とても好ましい」
そう言ってミリアを見る彼は、ふわりと微笑んだ。ちょうど、ミリア側から朝陽が昇り、彼は目を細める。その表情が、まるで少し照れ笑いを見せているように見え、いささか可愛い……と、ミリアは思った。
「買いかぶりですよ」
そう言って彼から目を逸らすミリアに、ヴィルマーは軽く肩を竦めて見せる。
「いやいや……まあ、ちょっと嫌な話をするとさ」
「ええ」
「未熟でなくなるために、何かを出来る。何かを知ろうと出来るっていうのかな……それが出来る環境にいたってことだ。だから、逆を言えばさ……いい生まれの人間が持っている考え方だな、って話にもなるんだが」
そのヴィルマーの発言に、ミリアはゆっくりと瞬きながら彼を見る。が、彼の表情、声音からは嫌な感じは受けない。
「いい生まれの人間でも、そんな発想にはなかなかならない。俺はそれを知っているんでね……で、話はそれだけか?」
「はい」
「そうか。頑張って来いよ」
ヴィルマーはそう笑って、ぽん、とミリアの肩に手を置いた。大きく、そして熱い手。彼の手のひらの熱が布越しでもじんわりと伝わる。それを不快と思わず、ミリアは「そうします」と答えた。