弱みを見せない騎士令嬢は傭兵団長に甘やかされる
「ギスタークが来たぞ!」
西側に行った警備隊は、ヘルマが率いていた。案の定、ヤーナックのすぐ近くにギスタークが2体現れたが、それらはどれも興奮状態だった。このままヤーナックの町に走っていきそうな勢いだったため、ヘルマは狩猟用に使う分銅を使った。連れて来た者で、分銅を持っている者は3人だけ。他の3人は、血を流させないために木刀を構えて、ヤーナックまでの道を塞いでいる。
「ふっ……」
ヘルマも、分銅はそこまで上手くはない。彼女は騎士だ。だが、ギスタークのように「血を流させない」ことが必要な魔獣を相手にするため、いくらか使ったことはある。ひゅんひゅん、と分銅を回し、遠くから走って来るギスタークに狙いを定めた。
(後ろにいる木刀の3人は震えている。そりゃそうよね。警備隊つっても、魔獣相手が初陣だなんて、そりゃあ、怯む)
だから、自分が仕留めなければ。とはいえ、二体同時に仕留めることは難しい。もう片方はもう一人に任せ、もし、それが外れたら自分が木刀で打って出る、とそこまでイメージをした。
「……はぁっ!」
ヘルマは分銅を投げた。荒れ狂って走って来るギスターク1匹は、それを避けることが出来ず見事に頭部に当たる。ギャン!と声が聞こえ、ごろごろと地面に倒れるギスターク。
「うわっ!」
だが、1人が投げた分銅は、ギスタークに当たらずさらに先に飛んで行ってしまった。そして、もう1人が投げた分銅は角に巻き付く。ヘルマは「やっぱりか」と、木刀を即座に構えて、ギスタークに対峙をした。
「こっわ……!」
ギスタークが跳躍をして、ヘルマに飛びかかった。後ろで木刀を構えていた男たちが、我慢出来ず奇声をあげる。ヘルマは、木刀を前に突き出し、ギスタークの口の中にそれをまっすぐ差し込んだ。
「くっ……!」
とびかかって来た前足の爪が、ヘルマの腕に引っ掛かる。が、それぐらいで済めば可愛いものだ。ギスタークは、自分の勢いのせいで口の中に木刀をめり込ませて、声も出ないほど悶絶してべしゃりと地面に落ちた。
「今よ!」
ヘルマのその声に合わせて、後ろに控えていた男たち3人は一斉にそのギスタークに襲い掛かった。が、先に分銅で倒したはずの一匹は起き上がり、彼らには向かわずに、方向を変えて走り出した。
「! わたしはあちらに向かう! あんたたちは、そいつを倒してから北側の部隊と合流して!」
北側のリーダーは、ミリアとヘルマが選んだ3人のうち2人が率いている。きっと彼らならばギスタークが現れてもなんとかしてくれているだろうと信じていた。ヘルマは近くに置いていた馬に飛び乗って、走っていくギスタークを追いかけた。何故なら、そのギスタークが向かった方角は、南側だったからだ。
(お嬢様……どうか、ご無事で……!)
西側に行った警備隊は、ヘルマが率いていた。案の定、ヤーナックのすぐ近くにギスタークが2体現れたが、それらはどれも興奮状態だった。このままヤーナックの町に走っていきそうな勢いだったため、ヘルマは狩猟用に使う分銅を使った。連れて来た者で、分銅を持っている者は3人だけ。他の3人は、血を流させないために木刀を構えて、ヤーナックまでの道を塞いでいる。
「ふっ……」
ヘルマも、分銅はそこまで上手くはない。彼女は騎士だ。だが、ギスタークのように「血を流させない」ことが必要な魔獣を相手にするため、いくらか使ったことはある。ひゅんひゅん、と分銅を回し、遠くから走って来るギスタークに狙いを定めた。
(後ろにいる木刀の3人は震えている。そりゃそうよね。警備隊つっても、魔獣相手が初陣だなんて、そりゃあ、怯む)
だから、自分が仕留めなければ。とはいえ、二体同時に仕留めることは難しい。もう片方はもう一人に任せ、もし、それが外れたら自分が木刀で打って出る、とそこまでイメージをした。
「……はぁっ!」
ヘルマは分銅を投げた。荒れ狂って走って来るギスターク1匹は、それを避けることが出来ず見事に頭部に当たる。ギャン!と声が聞こえ、ごろごろと地面に倒れるギスターク。
「うわっ!」
だが、1人が投げた分銅は、ギスタークに当たらずさらに先に飛んで行ってしまった。そして、もう1人が投げた分銅は角に巻き付く。ヘルマは「やっぱりか」と、木刀を即座に構えて、ギスタークに対峙をした。
「こっわ……!」
ギスタークが跳躍をして、ヘルマに飛びかかった。後ろで木刀を構えていた男たちが、我慢出来ず奇声をあげる。ヘルマは、木刀を前に突き出し、ギスタークの口の中にそれをまっすぐ差し込んだ。
「くっ……!」
とびかかって来た前足の爪が、ヘルマの腕に引っ掛かる。が、それぐらいで済めば可愛いものだ。ギスタークは、自分の勢いのせいで口の中に木刀をめり込ませて、声も出ないほど悶絶してべしゃりと地面に落ちた。
「今よ!」
ヘルマのその声に合わせて、後ろに控えていた男たち3人は一斉にそのギスタークに襲い掛かった。が、先に分銅で倒したはずの一匹は起き上がり、彼らには向かわずに、方向を変えて走り出した。
「! わたしはあちらに向かう! あんたたちは、そいつを倒してから北側の部隊と合流して!」
北側のリーダーは、ミリアとヘルマが選んだ3人のうち2人が率いている。きっと彼らならばギスタークが現れてもなんとかしてくれているだろうと信じていた。ヘルマは近くに置いていた馬に飛び乗って、走っていくギスタークを追いかけた。何故なら、そのギスタークが向かった方角は、南側だったからだ。
(お嬢様……どうか、ご無事で……!)