いつまでも、側に。
Ⅳ. 契約
──あれから2ヶ月。
僕は放課後、図書室に通うようになった。
翠月先輩に会うために。
それが、僕と翠月先輩が交わした“契約”の内容だった。
ある日の放課後、僕はまた図書室に来ていた。
翠月先輩に呼び出されたからだ。
「あ!ちゃんと来てくれたんだ!良かった〜」
「先輩が呼び出したんでしょう。」
「来てくれないかと。」
「僕はそんな薄情な人間ではありません。」
「あっそ。……で、話なんだけどさ」
「はい。」
「私と付き合ってよ。」
「はあ!?」
待て待て待て。
なんでそうなる。
僕と翠月先輩は、知り合ってまだ少ししか経ってない。
なのに、いきなり“私と付き合って”だって?
……頭沸いてるんじゃないんだろうか。
「大丈夫。本格的なやつじゃないから。」
と、すかさず翠月先輩からフォローが入る。
「なんていうか……“嘘カレ”?」
「なんだか最近、図書室に来てくれる子たちに告白されるんだよね。」
「最初は先生が追い払ってくれたんだけど、図書室前でたむろされたり、数が多いもんだからもうお手上げで。」
……そういえば、この人顔はいいんだよなぁ。
性格はこんなだけど。
「他の人に、頼めばよかったんじゃないんですか。」
「それがさぁ、みんな“面倒事はごめんだ”って感じで、断られちゃったんだよね。」
「だからさ、頼めるの“ちーくん”しかいないんだよ。」
……と、へらへらした感じで言ってくる。
「そんなの、僕に利益がないじゃないですか。」
「……1年。」
「えっ?」
「来年の、今日まで。それまででいいから、お願い。」
……そんな風に言われたら、断りづらくなるじゃないか。
「わかりました。先輩の“嘘カレ”、やります。」
また、思ってもいないことを口にしていた。
それからは、怒涛の日々だった。
毎昼休みに“ちーくん”と呼ばれる。
“一緒にお弁当食べよ?”と誘われる。
その度に、
「こいつが、どうかしたんですか」
と、あいつらいじめっ子に絡まれる。
そんな時、翠月先輩が、
「この子、私の彼氏だから。」
「手、出さないでね?」
と、言ってくれる。
……僕と先輩、逆なんじゃないだろうか。
自然と、いじめられなくなっていた。