家族に虐げられた令嬢は王子様に見初められる
きっとなにもできないし、それくらいのことはソフィアでもわかっていた。
それでも彼の言葉を思い出してすがりつきたくなるくらいに。ソフィアの生活は暗澹たるものだった。

「ねぇ、そろそろあんたにも教えておこうと思うんだけど」
またイザベラがやってきたのはそれから何日後のことだったか、ソフィアにはもうよくわからなかった。

窓の外を見ることもなくなったソフィアはほとんどの時間を眠って過ごすようになっていた。
運悪く起きてしまったときにも長い時間目を開けず、あのマルクを心配させたほどだ。

ソフィアが目を開けるとイザバラが鉄格子の向こう側で座り込んでいた。
珍しく部屋着姿で、これから出かける自慢をしに来たのではないことがわかった。

「もう察してると思うけど、私には恋人がいるのよ」
何の話だろうとソフィアは目を細める。
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