家族に虐げられた令嬢は王子様に見初められる
恋人自慢の話なら、わざわざ聞く必要はない。
「あなたも知っている人よ。アレクっていうの」

その懐かしい名前にソフィアは目を大きく見開いた。
それはソフィアが幼い頃に中の良かった男の子の名前だったのだ。

この小部屋に入れられたときに、アレクとイザベラが仲良さそうに歩いているのを目撃したことがある。
あのとき感づいたのだ。

イザベラは自分とアレクを遠ざけるためにわざと自分を小部屋へ押し込めたのだと。
すっかり目が覚めたソフィアはイザベラをにらみつける。

文句のひとつでも言ってやりたかったけれど、口を塞がれているからどうにもならない。
「彼、元々はソフィアのことが好きだったのよね。私もそれは気づいてた」

イザベラはなんでもないように言う。
自分の気持もアレクの気持ちも知っていて、ふたりを引き離したのだ。

その事実をアレクにも教えてやりたい。
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