家族に虐げられた令嬢は王子様に見初められる
力を使えと言っているのは一目瞭然だった。
ついこの前こっぴどく叱られたばかりなのに、そんなことできるはずがなかった。

「ダメだよ、外で力は使えない。パパと約束したの」
「それがなに? ソフィアの力は特別なものなのよ? それなのに使わないでいるつもり?」

「特別なんかじゃない。変なだけだよ」
ソフィアは自分の両手を見下ろして呟いた。

今よりももっと幼い頃、自分に力があるとも気が付かずに使ってしまったことがある。
それは風の強い日だった。

友達のお気に入りの帽子が飛ばされてしまって川に落ちたのを、力を使って拾ったのだ。
友達はすごく喜んでくれたし、そのときはいいことをしたと思っていた。

だけどソフィアの力のことはすぐに友達の家族に知られることになり、その後友達とは会えない状態が続いている。
< 11 / 138 >

この作品をシェア

pagetop