家族に虐げられた令嬢は王子様に見初められる
そう聞きたいけれど、口枷は外れていない。
その間にマルクに後ろ髪を掴まれて引き倒されてしまった。

「へへっ。てこづらせやがって」
そういうマルクの口からはアルコールの匂いがしてきた。

酔っ払っているのかもしれない。
普段のマルクがここまでソフィアに興味を持つことはないし、仕事だと割り切っているので、手出ししてくることもない。

誰かに飲まされたのかも……。
そう考えた瞬間、視界の中のイザラベと視線がぶつかった。

イザベラは口元に笑みを浮かべたまま、マルクを止めようともしない。
マルクを酔わせて絵言いなりにさせたのが誰だかわかった瞬間、マルクの顔が近づいてきた。

「くっせぇな! これじゃやる気もなくすだろうが!」
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