家族に虐げられた令嬢は王子様に見初められる

最後の晩餐

その日は朝食のときに手足のロープと口枷を外されて、そのままの状態で時間が過ぎていた。
きっとマルクが拘束するのを忘れたんだと思ったけれど、どうも様子がおかしい。

マルクがソフィアを無視しているのはいつものことだけれど、今日は視線がぶつかってもすぐに目をそらしてくる。
いつものイジワルな笑みも封印されていた。

なにより、こうして直ぐ側にいるのにロープを結び直そうとしないところが最大の違和感だった。
「マルク、今日はいつもの調子じゃないみたいだけど、どうかしたの？」

そう聞くと、檻の前に座り込み、背中を丸めて読書をしていたマルクの背中がビクリと震えた。
聞こえてきたことは確実だけど、やはり返事はない。

でもやっぱり変だ。