家族に虐げられた令嬢は王子様に見初められる
でも、それ以来会っていない。
ソフィアから会いに行くことはできないから、イザベラがここへ来てくれないと姉妹間で会話することすらできない状態だ。

「人が毎年年を取るのは当然のことだろう」
マルクは小馬鹿にしたような言い方をしたあと、古びた本を小部屋の中に投げ入れてきた。

バサリと音を立てて床に落ちた本を拾い上げると、マルクの指の垢がうやというほどについている。
だけどこれはソフィアにとって貴重なものだった。

孤独を和らげる道具。
時間を忘れさせてくれる道具。

小部屋の中にはマルクが読み終えた本が山のように積まれていて、そのどれもをソフィアも読み尽くしていた。
マルクが気まぐれに本をくれなければ、自分はとっくに孤独死していたんじゃないかと本気で思っている。

ソフィアはさっそく壁を背もたれにして本を開くのだった。
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