家族に虐げられた令嬢は王子様に見初められる
ソフィアは鉄格子の内側からマルクの腰当たりを確認した。
マルクの腰には鉄格子を開けるための鍵がぶら下がっている。

あれを手に取ることができれば、ここから出ることができる。
パーティーに行くことができる!

ソフィアはゴクリとつばを飲み込んで右手をマルクに向けた。
ほんの少し眠ってもらうだけ。

パーティーへ行って戻ってくるまでの、ほんの30分くらい。
それくらいの力を使うだけなら許されるはず。

心の中で何度も何度も自分に言い訳し、納得させる。
心の奥底に眠っている罪悪感が浮かんでこないように、隠すために必死だった。

「眠れ」
ソフィアが小さく呟いた次の瞬間、下がっていたマルクの首がさらにガランと垂れ下がり、大きなイビキが聞こえはじめた。
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