家族に虐げられた令嬢は王子様に見初められる
「ほどけろ」
力を込めたソフィアの言葉に、頑丈に結ばれていた紐がまるで医師を持ったかのようにうねうねと動き出した。

その様子にイザベラが歓喜の声を上げ、ソフィアは肩の力を抜いて手を下げた。
紐はまだ動き続けていて、自分から解けてパサリと地面に落ちた。

「さっすがソフィア! あんたの力って本当に役立つんだから!」
上機嫌なイザベアを見てソフィアも少しだけ嬉しくなる。

少しだけ物を移動させる。
少しだけなにかを浮かせる。

少しの間だけ、人を眠らせる。
これらがソフィアの持って生まれた能力だった。

「さ、次の紐もほどかないとね」
イザベラはソフィアをそう促したのだった。
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