家族に虐げられた令嬢は王子様に見初められる
☆☆☆

どうしてソフィアに少しだけ不思議な力が備わっているのか、それは誰にもわからなかった。
両親も姉も、そしてこの街に暮らしている人々もそんな力がある人なんて1人もいないらしい。

「ソフィア。このリンゴを砕いてみてよ」
リビングでお気に入りの本を読もうと考えていたソフィアを呼び止めたのはまたしてもイザベラだった。

イザベラの手には赤く熟して美味しそうなリンゴが握られている。
昨日ママが購入してきたもので、りんごパイにする言っていた。

「それはリンゴパイ用のリンゴよ。そのまま食べていいものじゃないからダメ」
「なにつまんないこと言ってんの? りんごパイにするにしたって、どうせカットするんだからいいじゃん」

イザベラはソフィアの力を面白がって、事あるごとに力を使わせようとしてくる。

少しの力でも体力は消耗するし、毎日のように力を使わせてくるイザベラには子供のソフィアでも疲弊してきたところだった。
「また今度ね」
ソフィアはまるで大人のように肩をすくめてみせると、本を抱えてリビングへと向かったのだった。
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