家族に虐げられた令嬢は王子様に見初められる
あの人たちもこじき狩りに参加している人だろうか。
もしもあの人たちに自分が見つかったら、王様のところへ連れて行かれてしまうかもしれない。

脳裏に自分がこの広場で公開処刑される姿が浮かんできて、慌てて想像をかき消した。
絶対にそんなことはさせない。

自分も、そしてあの青年のことも殺させてはいけない。
固く拳をにぎりしめたソフィアは再びあるき出した。

どうにかあの青年に出会うことができればいいけれど。
願わくば、もうすでにこの街を出ていっていてくれればいいけれど。

そうしてしばらく青年を探していたソフィアの前方に、同じように木々に身を隠すようにして息を潜めているこじきの姿が映った。
「あっ」

突然目の前に現れた探し人に思わず声を上げてしまう。
その声に驚いた青年が振り返る。

逃げ出されそうになったので、慌てて駆け寄ってその手を握りしめていた。
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