家族に虐げられた令嬢は王子様に見初められる
青年は驚いた瞳をソフィアへ投げかけたが、それは一瞬で色を変えた。
「君は、パーティのときの?」

小声で話しかけてくる青年にソフィアは何度も頷いた。
互いにあのときのことを覚えていたのだとわかり、嬉しくなる。

だけど今は再会を喜んでいる暇なんてなかった。
今すぐにこの街から青年を逃してあげないと、いつ誰に捕まるかわからない状況だ。

「街のはずれまで案内するわ」
「いや、でも僕は……」

青年が最後まで言わないうちにソフィアは強引に歩き出していた。
ソフィアに腕を掴まれている青年はそれについていく他ない。

広場から街のはずれまでは太い道が一本取っている。
けれど堂々とそこを歩いて行くわけにはいかない。

随分と遠回りになるけれど、商店の裏や民家の裏の細い路地を通って向かうしかなさそうだ。
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