家族に虐げられた令嬢は王子様に見初められる
そしてその道は青年にとっては迷路のようで、きっと街はずれまでたどり着くことはできないだろう。
ソフィアだって月に1度しか外出を許されていないから街のことに詳しいわけじゃない。

だけど、青年がやみくもに歩いて街を脱出するよりは効率的なはずだった。
そんなソフィアの考えも、広場から出た瞬間に打ち砕かれた。

ふたりがほんの一瞬大通りを横切ったことを、街の人たちは見逃さなかったのだ。
「こじきだ! いたぞ!!」

広場に野太い男の声が聞こえたかと思うと、大勢の街人たちが青年へ視線を向けた。
なぜソフィアが一緒なのかという疑問を持つよりも早く駆け出す人々。

ソフィアは咄嗟に順路を変えて自分の家へと駆け出した。
ここから家まではほんのわずかな距離だ。

生け垣をかき分けて小石を踏みつけながら走る。
今にも後ろからこじき狩りの男たちに捕まってしまうんじゃないか。

農具を頭に振り下ろされてしまうんじゃないかという恐怖がつきまとう中、ソフィアは全力で走って家の裏口から室内へと駆け込んだ。
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