家族に虐げられた令嬢は王子様に見初められる
そう言ってソフィアはトイレの隣のドアを開けた。
そこは昔掃除道具入れに使われていた場所で、今はなにも入っていない。

人1人なら座って入っていることができる場所だった。
「ドアは少し開けておくから大丈夫でしょう?」

「あぁ……なんとか」
ドアをしめれば完全な闇になってしまうから、本を一冊ドアの隙間に挟んで止めておくことにした。

こうしておけば誰もドアが開いていることを不思議には思わないはずだ。
一通りのことが終わってソフィアはようやくひと心地をつけた。

こんなに緊張したことは今までの人生で初めてのことかもしれない。
ここ最近、こんなことばかりだ。

そう思ってため息を吐き出し、同時に笑いだしてしまいそうになって必死にそれをこらえた。
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