家族に虐げられた令嬢は王子様に見初められる
鉄格子がはめられて鍵もかけられ、見張りまでいる部屋にいる理由。
それを話すためにはかなりの力が必要だった。

自分の持って生まれた不思議な力のこと。
それが原因で庭の塀を壊してしまったこと。

閉じ込められた後、おそらくイザベラが両親にあることないことを吹き込み、すっかり自分の信用は地に落ちてしまったこと。

話しているうちにソフィアは何度も言葉を喉につまらせて、頬が涙で濡れた。
それでも最後まで話し終えたのはきっと誰かに聞いてほしいと思っていたからだ。

「家族なのに1人だけこんなところに閉じ込めておくなんて許せない!」

ソフィアの話をすべて聞き終えたクリストフが勢いにまかせて掃除道具入れから出てきそうになった瞬間、今まで眠っていたマルクが身を揺すって目を覚ました。

ソフィアは咄嗟に掃除道具入れの前に座り込んで本を読んでいるふりをした。

掃除道具入れからで残ってしまったクリストフはドアの隙間から見えているソフィアに話かけようとするが、その背中から漂ってくる威圧感によって口を閉じてしまった。

マルクはいつも通りおとなしく読書しているソフィアを見て大あくびをしたのだった。
< 75 / 138 >

この作品をシェア

pagetop