家族に虐げられた令嬢は王子様に見初められる
匿う
クリストフが小部屋の中にいることは絶対に誰にもバレてはいけないことだった。
「朝飯だよ」

エミリーが持ってきたのはなにもついていない食パン2枚とグラスに入ったミルクだった。
「ありがとう」

ソフィアがそれを受け取ると、エミリーはすぐに小部屋から外へ出てマルクが頑丈に鍵をかける。
エミリーもマルクもその後はソフィアのことなんてほとんど視界にいれることなく自分の仕事をこなす。

ソフィアはそれが少しだけ悲しかった。
もう少し目を見て会話をしてくれればいいのにと、二人に何度もしくこく話しかけていた。

だけど今はふたりの無関心がソフィアにとって好都合となっていた。
ソフィアは受け取ったパンの1枚を掃除道具入れへと差し入れた。

それはすぐに手から離れて闇の中に吸い込まれていく。
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