家族に虐げられた令嬢は王子様に見初められる
☆☆☆
「どうして力を使って逃げ出さないんだ?」
その日の夜。
マルクの大引きが聞こえてくる中でクリストフのささやき声が聞こえてくる。
シーツの中で丸まっていたソフィアは顔だけ出して掃除道具入れを見つめた。
「こじきになったら捕まっちゃでしょう」
「逃げればいい。ソフィアは街の外へ逃げる順路を知ってるんだろう?」
知っている。
だからクリストフのことを助けようとも考えた。
だけど自分のことになるとどうしてもそういう風に考えることができない。
「私はいいの、このままで」
「なんで!?」
「ちょっと、静かにして」