家族に虐げられた令嬢は王子様に見初められる
「マルクが読み終わった本を読むことだってできるし、食事は自分で用意する必要だってないんだから」
そう胸を張ってみるものの、クリストフはやはりパッとしない表情のままだ。

ソフィアの話をため息交じりに聞いているし、時折呆れ顔まで浮かべている。
「それに、今はキウリストフが一緒にいてくれるし」

その言葉をきいてクリストフが一瞬目を見開いた。

「会話ができる人が近くにいるって素敵なことでしょう? あなたと一緒なら、きっとどこにいたって楽しいわよ。例えば溝の中のダンボールでできた家でも平気かも」

そう言って声を殺して笑う。
クリストフは元々こじきだし、ジョークのつもりで言ったのだけれど笑ってくれなかった。

クリストフは深い溜め息を吐き出して掃除道具入れに戻っていったのだった。
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