家族に虐げられた令嬢は王子様に見初められる
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一体どうしたら彼の機嫌がなおるんだろうか。
そんなことばかり考えて2日が過ぎた頃だった。
エミリーが持ってきた朝食のパンが一枚になっていたことに気がついてソフィアは声をかけた。
「今日のパンは一枚だけ? これじゃお腹が減っちゃう」
「今日の昼からご主人たちが買い物へ行くんだよ。朝はそれしかない」
エミリーは有無も言わさない声色でそう言い捨てると、さっさと行ってしまった。
一枚のパンをクリストフを半分個しないといけないことになってしまった。
これじゃお互いに空腹が収まることはないだろう。
早く買い物に出てくれればいいのに。
心の中で文句を言いながら食パンを半分にちぎって掃除道具入れに近づく。
少し開いたままのドアからパンを差し入れると、すぐにクリストフがそれを手にした。
それから「これだけ?」と、くぐもった声が聞こえてきた。
ソフィアは申し訳ない気持ちになりながら、自分の分のパンに噛み付いたのだった。