家族に虐げられた令嬢は王子様に見初められる
ここの生活はクリストフにとってそこまでひどいものだったんだろうか。
クリストフがここへ着てくれたおかげで会話する人ができ、生活に彩りが添えられた。

心が虹色になったのはソフィアだけだったのか。
そう思うと、もうなにも言えなかった。

自分のワガママでクリストフをとどめておくことはできない。
ソフィアは泣き出してしまいそうな顔になり、右手をマルクへ向けた。

「力を使って眠らせるわ。そうすれば30分は起きてこない。その間に街の外へ逃げることができる」
クリストフをここへ連れてきたのは自分だ。

逃げるなら、そのための手助けをしなきゃいけない。
今は幸い家族が買い物へ出ていて、家の中にいるのはマルクと自分たちだけだ。

エミリーは今日の午後から休みを取っているから、家にはいない。
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