家族に虐げられた令嬢は王子様に見初められる
だから家の中の異変に気がつくことができずに、油断してしまったんだ。
自分の小部屋へ戻ってきたソフィアは鉄格子の手前で足を止めた。

ここで眠っているはずのマルクがいない。
鉄格子の前でいびきをかいているはずのマルクがいない。

さっきまでの体の火照りが一瞬にして覚めていくのを感じる。
スーッと全身から血の気が引いて、呼吸が浅くなっていく。

立っていることもできなくなって、ソフィアは鉄格子にしがみつくようにして体を支えた。
「ようやくおかえりか?」

その声に息を飲んで振り返ると、そこには仁王立ちをしているマルクの姿があった。
それだけじゃない。

いつの間に返ってきていたのか家族全員が揃っているのだ。
< 94 / 138 >

この作品をシェア

pagetop