傷心した私が一夜を共にしたのはエリート俺様同期~いつも言い合いばかりだったのに、独占欲強め、嫉妬心剥き出しな程に溺愛してくるのですが?~
「うーん……」
「おい、陽葵?」
「……ん? 一、之瀬?」

 名前を呼ばれた事で意識がハッキリしてきた私はゆっくり目を開ける。

「ようやく起きたかよ」
「え? あれ? 私、寝てたの!?」

 一之瀬のその言葉と、彼の肩に寄り掛かっていた事で眠っていたのを知った私は慌てて身体を離した。

「ごめん!」
「いや、まあいいけど」
「結構寝てた?」
「いや、三十分くらいだよ」
「そ、そっか……」
「つーかさ、お前無防備過ぎない?」
「え?」
「所構わず、男の前で無防備に寝るとかさ」
「あ、うん、そうだよね。ごめん」
「ま、それだけ信用されてるって事なのかもしれねーけど、くれぐれも、他の男が居る前でそんな事するなよ?」
「分かってるよ……」

 確かに、いくら仮にだけど付き合ってるとはいえ、一之瀬は男なんだからちょっと無防備過ぎたかもしれない。

 でも、誰が居る前でも寝る訳じゃない。

 何ていうか、一之瀬が傍に居ると安心するのだ。

 だから、何だか睡魔に襲われると我慢できなくなって、いつの間にか眠っちゃう。

 他の人が居る前でそんな事、した事なかったのに。

「さてと、そろそろ帰るか」
「あ、うん! あーでも何か少しお腹空いたかも」
「マジかよ? けどまあ、俺も少し小腹空いたな。よし、ラーメンでも食いに行くか」
「いいね! 行こう行こう!」

 一之瀬と居ると、本当に自然体で居られる。別にお洒落に手を抜いている訳じゃないけど、変に飾らなくていいし、好きな物は好き、食べたい物は食べたい、とにかく変に遠慮したりする事が無いくらいに自分が出せるのだ。

 これってやっぱり、一之瀬とが一番合うという事なのだろう。

(何かもう、一之瀬が彼氏でいいような気がするな……)

 じっくり時間を掛けて決めようと思っていたけれど、ここまで合う人が他にいる気もせず、ついつい答えを出したくなってしまう。

(あ、そう言えば、来月の終わりって一之瀬の誕生日だったよね? その時に、正式に返事、しようかな?)

 お試し期間の三ヶ月の間に返事をすると決めていたし、どうせなら何か記念の日に返事をした方が思い出に残るかもしれないと思った私は来月末の一之瀬の誕生日に返事をしようと決めたのだけど、その決意を揺るがす出来事が起こってしまうなんて、この時は考えもしなかった。
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