傷心した私が一夜を共にしたのはエリート俺様同期~いつも言い合いばかりだったのに、独占欲強め、嫉妬心剥き出しな程に溺愛してくるのですが?~
SCENE3
館林(たてばやし) 昌磨(しょうま)です。今回社長からお話を頂いてこちらへの転職を決めました。前職も営業でしたが、こちらでは初心者ですので、皆様ご指導ご鞭撻のほどよろしくお願いします」

 あれから一週間程が経って、例の有望な営業マンがうちの職場へ入社して来たのだけど、私は彼に見覚えがあった。

 整った顔立ちに清潔感がある身なり、そして何より見るからに人の良さそうで優しげな爽やかイケメン――彼は少し前に駅で落としたパスケースを拾ってくれた親切な男の人だと思い出した。

 彼――館林さんが挨拶をしながら一人一人に笑顔を振りまいているものだから女子社員の皆はすっかり彼に夢中。

 そして彼が私に視線を向けると、恐らくあっちも私に見覚えがあると気付いたのだろう。一瞬驚いた表情を見せたもののすぐに笑顔に戻っていく。

 そんな彼の笑顔につられて私も微笑み返しただけなのだけど、それを心底面白く無さそうに見ていた人が居た。

「あーやだやだ、あーいう誰彼構わず笑顔振りまく男」

 その人物は隣に居る私にだけ聞こえるくらいのボリュームでぼそりと呟きながら、ジト目でこっちを見てくる。

「な、何よ?」
「やっぱりお前も、あーいうのが良いんだな」
「べ、別にそんな事無いって。それよりあの人……見覚え無い?」
「あ?」
「少し前、駅で私のパスケースを拾ってくれた……ほら、あの時一之瀬がナンパと勘違いした人だよ」

 私の言葉に再度まじまじと館林さんの顔を見る一之瀬。

「アイツ……まさかお前がここの社員だって知ってて声掛けたんじゃ」
「何言ってんのよ、偶然に決まってるじゃん。とにかくそんなに敵意剥き出しにしないでよ。私たちと同じ営業なんだから仲良くしないと」
「俺はごめんだね、仲良くなんて」

 すっかりヘソを曲げてしまった一之瀬はそっぽを向くと、いつの間にか挨拶も終わって周りも仕事をし始めた事から周り同様仕事に取り掛かる。

 私も席に着いてPCの電源を入れて準備を始めていると、

「あの、キミこの前の駅で会った子だよね?」

 私の斜め後ろの席を割り当てられた館林さんが声を掛けてきた。
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