傷心した私が一夜を共にしたのはエリート俺様同期~いつも言い合いばかりだったのに、独占欲強め、嫉妬心剥き出しな程に溺愛してくるのですが?~
「何か、すみません……」
「いや、全然。気にしてないよ」

 館林さんはとにかく大人だった。

 一之瀬が失礼な態度ばかり取っているにも関わらず、気にしていないと言ってくれるのだから。

 一之瀬も、少しくらい館林さんを見習って欲しいとさえ思ってしまう。

「――それに、一之瀬くんの気持ちも分からなくは無いからね」
「え?」
「こんな事言うと、彼はきっと良い顔しないと思うけど、本條さんが凄く魅力的だから俺が一之瀬くんの立場だったら同じように牽制してると思うよ」
「――!」

 館林さんの突然の発言に驚いた私は声すら出せずにいた。

(魅力的とか……本人を前にサラリと言えるの、すごい……)

 勿論言われて悪い気はしないし、そんな事を言われると少し意識してしまう。

(館林さん、モテるんだろうなぁ)

 当然、こんなにイケメンで大人な考えで優しくて女心を分かってる人には相手がいるはずだ。

 きっと彼女も美人で余裕がある大人の女性なんだろうなと思っていると、

「一つ、聞いてもいいかな?」
「はい?」

 館林さんは何か聞きたい事があるらしく、少し遠慮がちに尋ねてきた。

「本條さんと一之瀬くんって、いつから付き合ってるの?」
「え!? えっと、あの……」
「ああ、ごめんね、言いたく無ければいいんだ。ただ、少し気になってね」

 館林さんが聞きたい事、それは私と一之瀬がいつから付き合っているのかという内容。

 あくまでも仮だけど、これも一応付き合っている内に入ると思うから、迷った末に『実は、最近なんです』とありのままを答えた。

「そっか、最近なんだ。それなら彼のあの余裕の無さも納得だな。付き合いたてなら不安になるからね、彼女が可愛いと余計に」
「そ、そんな事は……」
「……でも本当、惜しかったな」
「……惜しい?」
「だって、もう少し早く俺がここに入社していれば、二人は付き合って無かった訳でしょ? だから、惜しかったなって」
「え……」
「――さてと、そろそろ仕事の話に戻ろうか。ね?」
「あ、は、はい……」

 今の館林の言葉は、一体……?
 私と一之瀬が付き合って無かったら良かったって……それって……。

「本條さん?」
「え!?」
「さっきの話、一之瀬くんには内緒だよ?」
「――!!」

 彼のその言葉で、さっきの意味が分かった気がした。

 自惚れじゃなければ、館林さんは――私に好意があるのだという事が。
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