傷心した私が一夜を共にしたのはエリート俺様同期~いつも言い合いばかりだったのに、独占欲強め、嫉妬心剥き出しな程に溺愛してくるのですが?~
 部屋に着いて、リビングに入った瞬間、一之瀬は私の事を自身の胸へ引き寄せると、そのまま抱き締めてきた。

「一之瀬――」

 まだ荷物すら置いていなかった私の手からバッグが床に落ちていき、一之瀬の名を口にしたところで唇を塞がれた。

「……ッん、……はっ、ぁ、んん――」

 息つく間も無く与えられるキスの嵐。

 後頭部を固定されて身動きすら取れない私は、ただひたすら一之瀬のペースに飲まれていく。

 勿論、嫌じゃない。

 何なら私だって、電車に乗っている時も、アパートまでの道のりも、一之瀬にくっつきたくて仕方無かった。

「……い、ちの、せ……ッ」
「――何?」

 何度も与えられるキスの合間にようやく一之瀬の名前を呼ぶ事が出来た私に、「何?」と問い掛けてくる。

「……あの、このままじゃ……。せめて、シャワー、浴びてから……」

 何だかこんな発言をすると、期待しているみたいな気もするけど、このままキスだけで終わる気はしなかったし、仕事の後だし、せめてシャワーは浴びたいと思って言ってみたのだけど、

「――シャワーなんて後で浴びればいいよ。今は、そんな時間も惜しいから」

 それは一瞬で却下され、抱き締められていた身体が離されたと思った刹那、腕を引かれて寝室にあるベッドの方へ歩いて行くと、

「俺は仕事中も、飯食いに行ってた時も、電車の中でも、アパートに来る間中も、ずっと、陽葵を抱きたくて仕方無かった――」

 そのままベッドの上に押し倒され、その上に一之瀬が跨がって来た。

「……で、でも、仕事だったし、汗、かいたから、汚いよ……」
「汚くねぇよ、つーか、お前に汚いとことかねぇし」
「ッちょ、やぁ、……ッ」

 そして、耳元で囁くように私の言い分を跳ね除けると耳朶から首筋へ舌を這わせたと思ったら、そのまま首筋から鎖骨の辺りに軽く吸い付くように口付けてきた。

 それが何を意味するのか、私には理解出来た。

 一之瀬はキスマークを付けてきたのだ。
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