さよなら尾崎くん
4、
「航、歩くのが速い。女の子の歩調に合わせないとモテないぞ」
「別にモテなくてもいいし。と言うか一緒に帰らなくてもいいんだ」
「そういう意地悪をいう男もモテないぞ」
尾崎君と話をした翌日、珍しく部活動の無かった恵と帰り道が一緒になった。マイペースで呑気な話ばかりをする恵なのだが、昨日の件で鬱蒼としていた気分を晴らしてくれた。最寄り駅から帰宅するまでの最後の一本道。幽霊騒ぎのある公園沿いに、いよいよ差し掛かろうとしたとき、道脇に尾崎君が立っていた。
「尾崎君、どうしてここに?」
「ああ、月島を待っていたんだ。昨日の口振りだと、まるで幽霊を見たかのように言っていたからな。あるとすれば噂の公園、ここに決まっている」